先輩!
「やめて、どエロいとか言わないで。こんな若いイケメンとできるチャンスもうないかもって思ったから、酔いを味方に、欲望をさらけ出したというか...」

「遊ばれてたの俺かよ」


笑い飛ばすと「違う違う」と穂乃果が慌てた。


「久しぶりすぎて恋愛の仕方忘れちゃった。恋のはじめ方って言うの?」

「はじめ方?」

「うんそう。芽衣ちゃんには偉そうにアドバイスしてるのに、自分のことになったらてんでダメ。虎太郎にのめり込んじゃいそう。遊ばれてたらどうしようって、不安で推しに逃げて貢ぎまくった」

「そんなんみんなじゃね?こんなにこの人の事好きになっていいの?信じきっていいの?って。でもそんなんビビってたら恋愛なんかできねえし」

「傷つかないように、自分を守ろうと必死なの」

「でもま、傷つけないようにするので」

「するので?」

「俺と付き合ってください」


俺なりの精一杯のキメ顔で、精一杯の言葉。

「尊っ」と呟いた穂乃果が「よろしく」と微笑んだ。


「たくさんいる推しに俺を加えてよ。今はまだ下の方でいいから。自力でのし上がっていく」

「わかってないなあ虎太郎。推しと恋人は全く別。それに、2人きりで初めて話したあの朝から、どの推しよりも虎太郎に夢中よ」


穂乃果は右耳に髪の毛をかけ、左に少し傾きながら伏し目がちに笑った。




【side虎太郎 完結】

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