先輩!
「見惚れちゃいますね。早瀬さんのご主人ですかね」

「どっかで見たことある顔だと思った。あの人、早瀬コーポの副社長だわ」

「え、早瀬ってあの?じゃあふたぎんの早瀬さんは社長夫人ですか」

「だろうね。厳密には次期社長夫人だろうけど」


それからまた先輩がだんまりだ。

我が社はふたぎんさんからあまり離れていないにしても、社に戻るまでずっと黙っていた。



「なあ、」

社の駐車場に車を止め、車を降りようとした私を引き留めるように先輩が口を開いた。


「早瀬夫婦を見てから、佐々木との妄想が止まんないんだけど。佐々木のこと好きすぎておかしくなったのかな」

「あの、」

「返事待ってくれって言われて、いくらでも待つってかっこつけたけど、内心不安でたまんないわけ」

「先輩」

「俺の気持ちバレたから伝えるって勝手なこと言ったけど、佐々木にとって迷惑で苦痛だったらどうしようって、ちょっと思ってる。いや、かなり思ってる。セクハラパワハラ三昧だもんな」

「迷惑って思ってないです。ただ少し、返事は待ってほしくて」


迷惑どころか、嬉しくて困ってます。


ただ、週末まで待ってください。
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