先輩!
5.やめないでください
「うわ、びっくりした」


野口さんの言うとおり、先輩はすぐ戻ってきた。たった今モカを飲み終わったところだ。

先輩は向かいの自席に座って、カバンから荷物を取り出す。


もちろんわたしのことは見てくれない。


「お疲れ様です。遅かったんですね」

「あー、出先で急に呼ばれて1軒寄った。荷物置いたらすぐ帰る。佐々木も早く帰れよ」

「はい、あの、」

「ふたぎんどうだった?」

「無事に進んでます」

「そ」


言い終わるや、逃げるように部屋を出ていこうとする先輩。

待って。待って先輩。


「先輩!」


大声で先輩を呼び止めた。

この時のために準備していた贈り物を手に。
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