花咲くように 微笑んで
第十四章 それぞれの想い
 「そっか、そうなんだね。三浦先生…」

 話を聞き終えると、有希は神妙な面持ちでうつむく。

 あれから数日経ち、久しぶりに会わない?と電話をくれた有希とランチをしながら、菜乃花は三浦とのことを打ち明けていた。

 「いい人だね、三浦先生って」

 ポツリと呟く有希に、菜乃花はまた涙が込み上げてきた。

 「有希さん、私、三浦先生を傷つけたくなかった。本当にいい人なの。優しくて、私なんかにはもったいないくらい素敵な人。結婚出来れば良かったのかな…」

 そう言った途端、新たな涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。

 有希は静かに微笑んで、菜乃花に語りかけた。

 「菜乃花ちゃん。同情で結婚する方が三浦先生に失礼よ?」
 「でも、じゃあ、私が先生を好きになれれば良かったのに…」
 「菜乃花ちゃんたら。それは本当の優しさではないし、ましてや本当の愛でもないわよ?三浦先生になんて言われたのか思い出して。幸せになれって言われたんでしょ?」

 涙でしゃくり上げながら、菜乃花は頷く。

 「だったら、幸せにならなきゃ。三浦先生の気持ちに応える為にも。ね?」
 「先生を傷つけたのに?私だけ幸せになんて…」
 「あらあら、菜乃花ちゃん。それも三浦先生に失礼よ。私の友人がみなと医療センターでナースをやってるって話したでしょ?三浦先生、それはそれは評判が良くてモテるんだって。すぐにいい人が現れるわよ。ぼやぼやしてたら、菜乃花ちゃんよりも先に三浦先生の方が幸せになるかもよ?」
 「あ、そうか。そうですよね。先生にはどうか幸せになって欲しいです。あんなにいい人なんだもの。私なんかよりもずっと素敵な人と結婚して欲しい」
 「ふふふ。じゃあ菜乃花ちゃんも、ちゃんと自分の幸せを見つけなきゃね」

 うーん、と菜乃花は下を向く。

 「私の幸せ…。見つける自信ないです」
 「そんなこと言わないの!三浦先生に怒られるわよ?私も、あと春樹もね。みんな菜乃花ちゃんが幸せになるのを願ってるわ。大丈夫!菜乃花ちゃんはちゃんと幸せになれる。ほんの少し、自分の気持ちを開放して素直になってみて。ね?」

 有希の言葉にじっと耳を傾けた後、菜乃花はコクリと頷いた。
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