花咲くように 微笑んで
 「宮瀬先生!」
 「はい。あ、三浦先生」

 病院の廊下で後ろから声をかけられた颯真は、足を止めて三浦を振り返った。

 「ちょっといいかな?君の耳に入れておきたいことがあってね」
 「えっと、先生とフィアンセのことでしょうか?でしたら、私なんかに報告は…」
 「いや、フィアンセなんかじゃないよ」
 「…はい?」
 「最初から鈴原さんは、俺のフィアンセなんかじゃない。俺には全く気がない彼女に、一方的にしつこく言い寄ってただけなんだ。でもね、ようやく気づいたんだよ。いい年の男がみっともないなって。だからきっぱり諦めて彼女にもそう伝えたんだ。言いたかったのはそれだけ。じゃあね」
 「はあ…」

 颯爽と去って行く三浦の後ろ姿に、颯真は呆然としながら気の抜けた返事で見送っていた。
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