花咲くように 微笑んで
 「じゃあね。菜乃花ちゃん、颯真先生」
 「はい、お邪魔しました」

 ソファで酔いつぶれている春樹に、じゃあな!と声をかけてから、颯真も有希に挨拶して菜乃花と一緒に玄関を出た。

 「マンションまで送って行くよ。おっと、大丈夫?」
 「はい、すみません」

 よろけた菜乃花に颯真が手を差し出す。
 平気だと思っていたが、歩き出すと急に酔いが回ってきた。

 「春樹につき合わされて、結構飲まされてたもんな。ごめんな」
 「宮瀬さんが謝ることはありませんですから、ん?ありゃしませ、ん?」
 「おいおい、大丈夫か?」

 ヨロヨロする菜乃花の腕を支えながら、颯真は車に乗せた。

 「気分悪くない?車に酔ったらすぐに教えてね」
 「大丈夫です。私、こう見えてちっとも酔っ払ってませんから」
 「いや、そうじゃなくて。ま、いいや。じゃあ出発するよ?」
 「はい。出発進行ー!」

 苦笑いしてから颯真はゆっくりと車を走らせ始めた。

 「みじゅきくん。可愛かったですねー」
 「瑞樹くんね」
 「かわゆくていい子でしゅねー」
 「はいはい。そうだねー」

 もはや菜乃花は呂律も回らない。

 やがて菜乃花のマンションに着いたが、一人ではまともに歩けそうになかった。

 「ここってゲストパーキングある?」
 「げしゅとぱーくん?ってだれ?」
 「ゲストパーキング!来客者用の駐車場」
 「ちゅうちゃじょうは、ここ。あいてたらどうじょ」
 「ここ?ってどこ?」

 窓を開けて見ると、白線の内側に『来客者用』と書かれた区画が一つあった。
 そこに駐車すると、颯真は菜乃花の腕を取って車から降ろす。
< 110 / 140 >

この作品をシェア

pagetop