花咲くように 微笑んで
 「宮瀬先生、ちょっといいかな?」
 「はい。え?」

 ERのデスクでパソコンに向かっていた颯真は、入り口から三浦に声をかけられて顔を上げた。

 だが、三浦の顔が恐ろしく引きつっているのが分かり、思わずたじろぐ。

 恐る恐る近づくと、廊下の端まで連れて行かれた。

 「宮瀬先生」
 「は、はい」

 向き合った三浦は、一見笑みを浮かべているが、こめかみに青筋が立っている。

 颯真はゴクリと生唾を飲み込んだ。

 「俺はね、よく温和な性格だと言われるけど、実は怒らせるとタチが悪いんだ。知ってた?」
 「あ、その…。今、身を持ってヒシヒシと感じております」
 「そう、それなら話は早い。君、一体いつまでボケーッとしてるつもり?曲がりなりにも医師だよね?一番大切な人も幸せに出来ないで、他の人を救えると思うの?」

 冷たい口調で一気にまくし立てると、グイッと顔を寄せて小声でとどめを刺す。

 「手が空いたら、小児科病棟のプレイルームに来て。待ってるから」
 「は、はい」

 直立不動で返事をすると、三浦はサッと身を翻し、ツカツカと足早に去っていった。
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