花咲くように 微笑んで
第十七章 クリスマスの王子様
 「こんばんは。お邪魔します」

 菜乃花は小児科病棟のナースステーションに、小声で挨拶に行く。

 子ども達は1時間前に就寝時間となり、病室は暗く静まり返っていた。

 「鈴原さん、こんばんは。クリスマスイブなのに、ありがとう」

 ベテランのナースが、声を潜めながら笑いかけてくれる。

 菜乃花は、30分程で終わりますから、と断ってプレイルームに行った。

 「さてと!まずはこのカードと本をツリーの下に並べて…」

 持って来た紙袋からクリスマスカードを取り出すと、ラッピングした10冊の本と一緒にツリーの近くに置いた。

 カードには、『メリークリスマス』の言葉と共に、クリスマスに関するクイズがいくつか書かれている。

 そしてその答えは、ラッピングされた本の中に書かれていた。

 子ども達が自然と本を手に取りたくなるように、そして興味を持って本を読んでくれるようにと考えて、菜乃花は今夜の為に準備していた。

 「これでよし!みんなクイズ、楽しく考えてくれるかな?あとは壁の飾りと…」

 明日、目を覚ました子ども達がここに来て、わあ!と喜んでくれるように、飾り付けも華やかにしようとあれこれ持って来ていた。

 部屋の片隅にあるパイプ椅子を持ってくると、壁際に広げてからよいしょっと座面に乗って立ち上がる。

 ガーランドを手に視線を上げた時、天井の明かりが目に入ってくらっとめまいがした。
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