花咲くように 微笑んで
 「それでは、メリークリスマス!」

 菜乃花のマンションに着くと、ローテーブルに料理を並べて二人で乾杯する。

 グラスの中身はジンジャエール。

 菜乃花が、買ってきたワインを注ごうとすると、颯真はまたもやそれを拒んだ。

 (もう、どうして?)

 そう思いつつ、菜乃花は仕方なく諦めることにした。

 二人で他愛もない話をしながら、料理を味わう。

 「コンビニのチキンも結構美味しいな」
 「本当ですね。それに今夜はどこのレストランも混んでるでしょ?おうちでのんびりするのもいいですね」
 「確かに。でも良かったの?せっかくのクリスマスイブなのに、子ども達の為に飾り付けして。何か予定あったんじゃないの?」
 「特にないですよ。それに子ども達の為じゃなくて、自分が嬉しいだけなんです」

 ん?どういうこと?と颯真は首を傾げる。

 「子ども達、喜んでくれるかなー?って思いながらあれこれ準備するのって、とっても楽しいんです。今日も、飾り付けしながらワクワクしました。明日、子ども達の反応は見られないけど、喜んでくれるといいな」

 そう言ってふふっと笑う。
 そんな菜乃花に一瞬見とれてから、颯真はうつむいて小さく呟く。

 「参ったな。本当に君は…」
 「え?何ですか?」
 「いや、どうしてそこまで出来るのかなと思って。君は子ども達の主治医でも担当ナースでもない。ましてや、ボランティアであって仕事でもない。なのにどうして?」

 うーん、と菜乃花は考える。

 「そんなに変ですか?私のしてることって」
 「変だなんて、そんなことはないよ。ただ、単純に不思議なんだ。それと少し心配でもある」
 「心配、ですか?」
 「ああ。君はプライベートを犠牲にしてるんじゃない?今夜だって、本当は街で素敵なクリスマスイブを過ごすことだって出来たはずなのに」
 「それを言ったら、宮瀬さんの方こそ心配です」
 「は、俺?どうして?」
 「だって、いつも頑なにお酒を飲まないでしょう?非番の時でも」

 何の話かと、颯真は目をしばたかせた。
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