花咲くように 微笑んで
 「ご馳走様でした。とっても美味しかったです。素敵なクリスマスの夜になったなあ」

 菜乃花はうっとりしながらレストランを出る。

 「菜乃花。クリスマスの夜はまだまだこれからだよ」
 「え?」

 怪訝そうな菜乃花を連れて、颯真はエレベーターで下の階に行く。

 客室が並ぶフロアの真ん中まで進むと、ポケットからカードキーを取り出してピッと鍵を開けた。

 「ええ?お部屋を取ってあったの?」
 「ああ。クリスマスだけど平日だからか、一部屋空いてたんだ。そんなに広い部屋じゃないけどね。どうぞ」

 促されて足を踏み入れた菜乃花は、窓の外に広がる夜景に感嘆の声を上げる。

 「わあ、なんて綺麗…」

 颯真は部屋の照明を絞った。

 夜空に輝く星と、月明かりをキラキラと映す海の水面。

 菜乃花は颯真と肩を並べてしばらく魅入っていた。
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