花咲くように 微笑んで
 翌朝。

 念願のお風呂に入り、豪華なホテルの朝食を味わった菜乃花は、ご機嫌で颯真に尋ねる。

 「颯真さん。今日はどこに行くんですか?」
 「菜乃花はどこか行きたいところある?」
 「んー、特に思いつかないなあ」
 「じゃあまずは、俺の買い物につき合ってもらってもいい?」
 「もちろんです。何を買いに行くんですか?」
 「婚約指輪」
 「そうなんですね」

 バッグに荷物を詰めながら返事をした菜乃花は、ん?と手を止めた。

 「婚約指輪って、何でしたっけ?」

 あまりにサラッと言われて、思わず確かめる。

 「結婚を約束した相手に贈るエンゲージリングだよ」
 「そうですよね」

 頷きつつも、一体誰に贈るのだろうと、どこか腑に落ちない。

 「菜乃花、お風呂大好きだろう?夜にゆっくり温まりたいよね?」
 「はい。冬は特に」
 「だから早くお嫁に来た方がいいと思って」
 「お嫁に行くと、夜にお風呂に入れるの?」
 「菜乃花の主張だとそうみたい。だから、なるべく早く俺のところにお嫁においで」

 ぱちぱちと瞬きしてから、菜乃花は頷いた。

 「はい。颯真さんのところにお嫁に行って、夜にゆっくりお風呂に入りたいです」
 「そう、良かった!」

 颯真ににっこり笑いかけられ、菜乃花も思わず微笑み返す。

 そして二人は、ジュエリーショップを訪れた。
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