花咲くように 微笑んで
第四章 住まいは分かるが連絡先は知らない彼女
 「あ、菜乃花ちゃん!」
 「鈴原さん!大丈夫だったかい?」

 図書館に戻ると、谷川と館長が心配そうに尋ねてきた。

 「はい、大丈夫です。加納さんの奥さんと娘さんもいらして、主治医の先生から説明も受けました。心筋梗塞だったみたいです。カテーテル治療をしてしばらく入院になりますが、後遺症などはあまりないだろうとのことでした」
 「そうなのね!良かった…」
 「ああ、ホッとしたよ」

 菜乃花は改めて二人に頭を下げる。

 「館長、谷川さん。あの時はありがとうございました」
 「何言ってるのよ、菜乃花ちゃん。全部あなたのおかげよ」
 「そうだよ、鈴原さん。君がいてくれて良かった」
 「いえ、私一人では到底無理でした。本当に助かりました。あ、それと館長。AEDはドクターが解析するので加納さんの身体につけたまま搬送しました。新しいAEDの手配をお願い出来ますか?」
 「ああ、分かった」
 「それより菜乃花ちゃん、お昼食べた?」

 谷川の言葉に菜乃花はふと時計を見る。
 既に3時になろうとしていた。

 「そう言えばまだ何も」
 「早く食べてらっしゃい」
 「そうだな。それに今日は疲れただろう。最低限のことだけやったらもう上がりなさい」

 谷川と館長の言葉に菜乃花はありがたく休憩を取り、その日は定時で帰らせてもらった。
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