花咲くように 微笑んで
第五章 消えゆく恋心
 年が明け、半月が経った頃、菜乃花はみなと医療センターを訪れた。

 「加納さん、こんにちは」
 「菜乃花ちゃん!」

 病室に入ると、おじいさんが満面の笑みで迎えてくれる。

 「体調はいかがですか?」
 「菜乃花ちゃんのおかげで、もうすっかり元気だよ。ありがとうな、菜乃花ちゃん」
 「いいえ。お元気そうで良かったです」
 「わざわざ見舞いに来てくれたのかい?」
 「ふふ、今日は加納さん専用の移動図書館に来ました」

 へ?とおじいさんは目を丸くする。

 「加納さん、この作家さんの本、お好きでしょう?新作が入ったから持って来たの。他にも何冊か加納さんが好きそうなものを」

 そう言って、トートバッグから本を数冊取り出す。

 「おお!ありがとう、菜乃花ちゃん。嬉しいよ。入院生活も暇になってきたから」
 「良かったです。体調無理しないで、ゆっくり読んでくださいね。また読み終わる頃に新しい本、持って来ますね」

 おじいさんは、何度もありがとうと繰り返しながら、本を手にして笑顔になる。

 菜乃花も、来て良かったと微笑んだ。
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