花咲くように 微笑んで
 「お疲れ様」
 「宮瀬さん!」

 絵本を片付けていると、白衣姿の颯真が近づいてきた。

 「子ども達、楽しそうだったね」
 「え、やだ!見てたんですか?」
 「うん。だって凄い盛り上がりようだったから、気になって」
 「お恥ずかしい…」

 子ども達の前では大げさに面白おかしくやってみせるのだが、冷静に大人に見られていたのかと思うと、急に恥ずかしくなる。

 「小児科の看護師長も喜んでたよ。子ども達、みんな楽しそうだったから、また来て欲しいって」
 「そうなんですね。じゃあ、またお邪魔します」
 「ありがとう。でも無理しないでね」
 「はい。あと、このコーナーに何冊か絵本を持って来て置いておきますね」
 「助かるよ、ありがとう」
 「いいえ」

 その時「先生、ちょっといいですか?」とナースが颯真を呼びに来た。

 「今行きます。それじゃあ、また」
 「はい。失礼します」

 菜乃花が見送っていると、ナースステーションの前を通り過ぎる颯真を、カウンターの中から数人のナースが次々と目で追っている。

 (さざ波の颯真、だっけ?)

 有希のセリフを思い出して苦笑いする。

 そして古い絵本を補強し、綺麗に並べて見やすくしてから、菜乃花は病院をあとにした。
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