花咲くように 微笑んで
 「すまん!本当に悪かった」

 みなと医療センターの食堂で、春樹と有希は颯真に謝る。
 とにかく事情を説明しようと、多忙な颯真に合わせて二人は颯真の昼休みに会いに来ていた。

 「本当にごめんなさい、颯真先生」
 「いや、いいんだ。俺が謝られることなんて何もないよ」

 そう言いつつ、颯真は動揺を隠し切れない。

 マンションで会った切りの菜乃花が、最近元気にやっているかどうか気になり、ふと思い立って春樹に聞いてみようと電話をかけた。

 そして思わぬ形で菜乃花の近況を知ることになったのだ。

 (なんだって?三浦先生が、彼女にプロポーズを?いつの間にそんな…)

 「あの、颯真先生?やっぱり…ショック?」

 恐る恐る聞いてくる有希に、「いや、全然」と思わず首を振る。

 「だって、ほら、彼女がプロポーズされたからって、俺は別に。ねえ?」
 「ねえって言われても。ねえ?」

 有希にパスを回されて春樹はたじろぐ。

 「そ、そうだよな。菜乃花がどうなっても、颯真には関係ない…」
 「春樹!」

 有希が思わず春樹を咎める。

 「いや、春樹の言う通りだよ。俺はあの二人にとって部外者だ」
 「でも、本当にそれでいいの?颯真先生」
 「もちろん。あ、ごめん。そろそろ戻らないと」
 「え、もう?」
 「うん。ちょっと様子が気になる患者さんがいてさ。ごめんな。二人はどうぞごゆっくり」

 そう言うと、颯真は食器を手に席を立つ。
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