花咲くように 微笑んで
数日後。
颯真は小児科病棟でカルテを見せながら、三浦に患者の申し送りをしていた。
深夜に喘息の大発作で救急搬送された5歳の女の子が、容体が落ち着いた為、小児科病棟に移ることになったのだ。
「私からは以上です」
「了解しました。あとはこちらで引き受けます」
「よろしくお願いします」
颯真は三浦にお辞儀してから、背を向けて歩き出す。
「あ、宮瀬先生!」
呼び止められて颯真は振り返った。
「ごめん、ちょっといいかな?」
「はい、何でしょう」
「仕事の話じゃなくて恐縮なんだけど。宮瀬先生、図書ボランティアの鈴原さんとお知り合いなんだってね」
颯真は内心ぎくりとしながら頷く。
「はい。共通の友人がおりまして」
「そう。実は先日、鈴原さんに結婚を申し込んだんだ。返事はまだもらってないけど、君の耳には入れておこうと思って」
「あ、そうでしたか。お気遣いありがとうございます。ですが、私なんかに申し送りは不要です。あの、どうぞお幸せに」
「いやいや、まだ返事はもらってないってば。それに申し送りって…。真面目そうに見えて案外面白いんだね、宮瀬先生って。良かったら、今度食事でも一緒にどう?なんて、俺が鈴原さんのことを教えてもらいたいからなんだけど」
「はあ、お誘いは嬉しいですが、私は彼女のことは何も知らなくて…」
「何もってことはないでしょう?」
「いえ、本当にほとんど何も。知り合ってから5ヶ月も経ってませんし」
「そうなの?それなら、俺にも分があるかな」
「もちろんです。三浦先生を断る女の子なんて、いないと思います」
「ありがとう。でも、宮瀬先生を断る女の子もいないと思うよ」
「いえ。そう思われてるのにフラレたら、ダブルパンチです」
「あはは!俺もだよ」
おかしそうに笑うと、三浦はポンと颯真の肩に手を置く。
「彼女のこと抜きでも、今度一緒に飲みに行こうよ」
「はい、是非」
「ああ、楽しみにしてる。じゃあね」
「はい、失礼します」
三浦は爽やかな笑顔で頷くと、くるりと向きを変えて去って行った。
颯真は小児科病棟でカルテを見せながら、三浦に患者の申し送りをしていた。
深夜に喘息の大発作で救急搬送された5歳の女の子が、容体が落ち着いた為、小児科病棟に移ることになったのだ。
「私からは以上です」
「了解しました。あとはこちらで引き受けます」
「よろしくお願いします」
颯真は三浦にお辞儀してから、背を向けて歩き出す。
「あ、宮瀬先生!」
呼び止められて颯真は振り返った。
「ごめん、ちょっといいかな?」
「はい、何でしょう」
「仕事の話じゃなくて恐縮なんだけど。宮瀬先生、図書ボランティアの鈴原さんとお知り合いなんだってね」
颯真は内心ぎくりとしながら頷く。
「はい。共通の友人がおりまして」
「そう。実は先日、鈴原さんに結婚を申し込んだんだ。返事はまだもらってないけど、君の耳には入れておこうと思って」
「あ、そうでしたか。お気遣いありがとうございます。ですが、私なんかに申し送りは不要です。あの、どうぞお幸せに」
「いやいや、まだ返事はもらってないってば。それに申し送りって…。真面目そうに見えて案外面白いんだね、宮瀬先生って。良かったら、今度食事でも一緒にどう?なんて、俺が鈴原さんのことを教えてもらいたいからなんだけど」
「はあ、お誘いは嬉しいですが、私は彼女のことは何も知らなくて…」
「何もってことはないでしょう?」
「いえ、本当にほとんど何も。知り合ってから5ヶ月も経ってませんし」
「そうなの?それなら、俺にも分があるかな」
「もちろんです。三浦先生を断る女の子なんて、いないと思います」
「ありがとう。でも、宮瀬先生を断る女の子もいないと思うよ」
「いえ。そう思われてるのにフラレたら、ダブルパンチです」
「あはは!俺もだよ」
おかしそうに笑うと、三浦はポンと颯真の肩に手を置く。
「彼女のこと抜きでも、今度一緒に飲みに行こうよ」
「はい、是非」
「ああ、楽しみにしてる。じゃあね」
「はい、失礼します」
三浦は爽やかな笑顔で頷くと、くるりと向きを変えて去って行った。