花咲くように 微笑んで
第九章 初めてのデート
 「鈴原さん、こんにちは」
 「こんにちは」

 プロポーズされて以来、初めての図書ボランティアの日。

 (今日三浦先生にお会いしたら、返事をしなくちゃいけないのかな)

 そう思いながら、菜乃花はいつもの小児科にやって来た。

 本棚の整理を始めてすぐ、三浦から声をかけられる。

 「いつもありがとう」
 「いえ」

 短く挨拶したあと、三浦が切り出した。

 「ごめん、今日はこのあとカンファレンスが入ってて、おはなし会は聞けないんだ」
 「そうですか。お疲れ様です」
 「うん。それで、その。考えてもらえたかな?結婚について」
 「あっ、はい。それがまだ決めかねていまして…」

 菜乃花はうつむいて小さく答える。

 「もう少しお時間いただけませんか?」
 「もちろん、いいよ。それによく考えたら、本音とは言え、いきなり結婚はないだろうって自分でも反省してたんだ。良かったら、まずは一緒にどこかに出かけたりしない?」
 「はい、そうですね」
 「本当?良かった!それも断られたらどうしようかと思ってたんだ」

 三浦はホッとしたように笑顔になる。

 「えっと。じゃあ、連絡先教えてもらってもいい?」
 「はい」

 菜乃花はスマートフォンを取り出して、互いの連絡先を交換した。

 「ありがとう!早速あとでメッセージ送るね」
 「はい。よろしくお願いします」
 「こちらこそ。それじゃあ」

 去り際の三浦の笑顔は、心底嬉しそうだった。
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