花咲くように 微笑んで
「わあ、水族館なんて久しぶり!」
大きな水槽の中を気持ちよさそうに泳ぐ魚達に、菜乃花は子どものように目を輝かせる。
「俺も久しぶりだなあ。大人になってもこんなに楽しいんだね、水族館って」
「ええ。あ、イルカショーもやってますよ」
「お、それは外せないな。あと少しで始まる。行こうか」
「はい!」
二人は童心に返って、歓声を上げながらイルカショーを楽しんだ。
昼食は、海に突き出た海上レストランに入り、テラス席に案内された。
「とっても気持ちがいいですね」
「そうだな。寒くない?」
「はい、大丈夫です」
三浦は常に菜乃花に気を配り、オーダーもスマートに済ませてくれる。
「あの、下の名前で呼んでもいいかな?菜乃花ちゃん。…あ」
料理を取り分けながらそう言って、気まずそうに顔をしかめた。
「聞く前に呼んじゃうなんて。もう本当に俺、君のことになると急ぎ過ぎだな。余裕なくて申し訳ない」
「いいえ、大丈夫です」
「良かった。でも菜乃花ちゃんって呼んだら、まさるくんにバレちゃうな」
「あはは!呼び捨てにしたら恋人になったってこと、でしたっけ?」
「そう。子どもって鋭いからな。呼び捨てにしなくてもバレそうだけど」
菜乃花は、子ども達にたじたじになっていた三浦を思い出し、ふふっと笑った。
「菜乃花ちゃんって、最初から図書館司書を目指してたの?」
「え?」
ふいに聞かれて、菜乃花は戸惑う。
「いや、ほら。子ども達に好かれてるから、保育士さんにも向いてるなあと思ってて。どうして司書になろうと思ったの?」
「それは…」
フォークを持つ手を止めて、菜乃花は視線を落とす。
心理士を諦め、たまたま講義を受けて資格を取っていた司書になった経緯は、三浦には話しづらい。
「あ、ごめん。別に深い意味はないんだ。気にしないで」
「いえ、私の方こそすみません」
「いや、余計なこと聞いちゃったね。俺もさ、周りによく言われるんだよ。子ども好きですねって。でも自分ではそんな自覚なくて…」
「そうなんですか?私も三浦先生は、とってもお子さん好きだと思ってました」
「そうなんだ。どうしてなのかな?あ、もしかして、俺が知能指数低くて、子ども達とちょうど話が合うのかな?」
真顔でそう言う三浦に、菜乃花は思わず笑う。
「お医者様が知能指数低いなんて、そんなこと」
「いや、ほら。会話レベルとか性格とか、そういうのは子どもと近いのかも」
「ああ、なるほど」
「あ、やっぱりそう思ってるの?菜乃花ちゃんも」
「えっと、その…」
「否定しないってことはそうなんだ」
「まあ、そうですね」
「あはは!参ったな。せめて菜乃花ちゃんとは会話が成り立つように頑張らないと」
明るく笑いかける三浦に、菜乃花もつられて笑顔になる。
(楽しい先生だな、三浦先生って)
一緒にいても退屈せず、心地良い時間を過ごせる。
菜乃花はいつの間にかそんなふうに感じていた。
大きな水槽の中を気持ちよさそうに泳ぐ魚達に、菜乃花は子どものように目を輝かせる。
「俺も久しぶりだなあ。大人になってもこんなに楽しいんだね、水族館って」
「ええ。あ、イルカショーもやってますよ」
「お、それは外せないな。あと少しで始まる。行こうか」
「はい!」
二人は童心に返って、歓声を上げながらイルカショーを楽しんだ。
昼食は、海に突き出た海上レストランに入り、テラス席に案内された。
「とっても気持ちがいいですね」
「そうだな。寒くない?」
「はい、大丈夫です」
三浦は常に菜乃花に気を配り、オーダーもスマートに済ませてくれる。
「あの、下の名前で呼んでもいいかな?菜乃花ちゃん。…あ」
料理を取り分けながらそう言って、気まずそうに顔をしかめた。
「聞く前に呼んじゃうなんて。もう本当に俺、君のことになると急ぎ過ぎだな。余裕なくて申し訳ない」
「いいえ、大丈夫です」
「良かった。でも菜乃花ちゃんって呼んだら、まさるくんにバレちゃうな」
「あはは!呼び捨てにしたら恋人になったってこと、でしたっけ?」
「そう。子どもって鋭いからな。呼び捨てにしなくてもバレそうだけど」
菜乃花は、子ども達にたじたじになっていた三浦を思い出し、ふふっと笑った。
「菜乃花ちゃんって、最初から図書館司書を目指してたの?」
「え?」
ふいに聞かれて、菜乃花は戸惑う。
「いや、ほら。子ども達に好かれてるから、保育士さんにも向いてるなあと思ってて。どうして司書になろうと思ったの?」
「それは…」
フォークを持つ手を止めて、菜乃花は視線を落とす。
心理士を諦め、たまたま講義を受けて資格を取っていた司書になった経緯は、三浦には話しづらい。
「あ、ごめん。別に深い意味はないんだ。気にしないで」
「いえ、私の方こそすみません」
「いや、余計なこと聞いちゃったね。俺もさ、周りによく言われるんだよ。子ども好きですねって。でも自分ではそんな自覚なくて…」
「そうなんですか?私も三浦先生は、とってもお子さん好きだと思ってました」
「そうなんだ。どうしてなのかな?あ、もしかして、俺が知能指数低くて、子ども達とちょうど話が合うのかな?」
真顔でそう言う三浦に、菜乃花は思わず笑う。
「お医者様が知能指数低いなんて、そんなこと」
「いや、ほら。会話レベルとか性格とか、そういうのは子どもと近いのかも」
「ああ、なるほど」
「あ、やっぱりそう思ってるの?菜乃花ちゃんも」
「えっと、その…」
「否定しないってことはそうなんだ」
「まあ、そうですね」
「あはは!参ったな。せめて菜乃花ちゃんとは会話が成り立つように頑張らないと」
明るく笑いかける三浦に、菜乃花もつられて笑顔になる。
(楽しい先生だな、三浦先生って)
一緒にいても退屈せず、心地良い時間を過ごせる。
菜乃花はいつの間にかそんなふうに感じていた。