花咲くように 微笑んで
 「おはよう。お待たせ」
 「おはようございます。今日もよろしくお願いします」
 「こちらこそ」

 三浦との2度目の約束の日を迎えた。
 菜乃花のマンションに、また車で迎えに来てもらう。

 「えっと、今日はBコースでいい?」
 「ふふっ、はい。Bコースでお願いします」
 「よし、じゃあ映画館のあるショッピングモールに行こう」

 そう言って、三浦は大きなショッピングモールに車を走らせた。

 「何か観たい映画ある?」
 「えっと、今上映してる映画が何かよく知らなくて。何でもいいですけど、キャラメルポップコーンを食べながら観たいです」
 「あはは!分かった。そうしよう」

 まだ10時前ということもあり、道は空いていてあっという間に到着した。

 駐車場に車を停めると、二人で店内への入り口に向かう。

 「ちょうどいい時間の映画、何があるかな。おっと、ごめん。駐車券を車に置いてきちゃった。すぐ戻るよ」
 「はい」

 菜乃花は、タタッと車に戻って行く三浦の後ろ姿を見送る。

 ふと見ると、すぐ前に停まった車から親子連れが降りてきた。

 3歳くらいの男の子が、楽しそうにピョンピョンと車の横を飛び跳ねている。

 「はやくー!」
 「ちょっと待って」

 パパとママは、チャイルドシートに乗せた小さな女の子を降ろすのに夢中になっている。

 (妹ちゃんもいるのね。可愛いなあ)
 
 菜乃花が微笑ましくその家族を見ていると、待ちきれなくなった男の子が、菜乃花の立っている入り口の方に向かって駆けて来た。

 「あ、待ってってば!」

 ママが男の子に声をかけた時、ブオン!とバイクの音がした。

 見ると、スピードを緩めず駐車場のコーナーを曲がろうとしたバイクが、そのままスリップしてこちらに突っ込んでくる。

 「危ない!」

 菜乃花の声はママの悲鳴にかき消される。
 考えるより先に、菜乃花は弾かれたように男の子に飛びついた。
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