花咲くように 微笑んで
第十一章 思いがけないプレゼント
 「おはようございます、鈴原さん。気分はどうですか?」

 目を覚ました菜乃花に、塚本医師が声をかける。

 「はい、随分良くなりました」
 「そうですか。少し診察させてください」

 塚本は菜乃花の心音を聞いたり、手足の傷の具合を確かめた。

 「夜中に熱が出たので、もう一晩ここで看させてください。問題なければ明日は一般病棟に移れますよ。三浦先生ともゆっくり面会出来ると思います」
 「え?」

 菜乃花が首を傾げると、塚本も、え?と聞き返す。

 「君、三浦先生とおつき合いしてるんじゃないの?」
 「え、ああ!一般的にはそうです」
 「一般的?」
 「それより、あの。三浦先生は夜中につき添ってくださっていたのですか?」
 「いや。基本的にはここのスタッフしかいないから。ごめんね、明日には会えると思うよ」
 「いえ、大丈夫です」

 塚本が離れて行くと、菜乃花は心の中で思い出す。

 (誰かがずっとそばにいてくれた気がする。おでこを優しく撫でてくれて、ホッとしたなあ)

 そのあとはナースの体調チェックを受け、ひと通り検査を済ませると、菜乃花はすることもなく暇になる。

 安静に、と言われている為、歩き回る訳にもいかず、持ち物も何もなく時間を持て余した。

 (うーん、暇だ。あ!そう言えば仕事は?)

 三浦が昨日、職場にも連絡を入れておくと言ってくれたが、直接館長と話したい。

 ナースに相談すると、いいですよと言われてベッドに横になったまま電話をかけた。

 「もしもし、館長?鈴原です」
 「鈴原さん!大丈夫なの?」
 「はい。ご心配おかけしました」
 「もうびっくりしたよ。谷川さんも凄く心配してた。お見舞いにも行っちゃダメなんだって?」
 「あ、はい。でも明日には一般病棟に移る予定です。館長、お仕事お休みしてしまって申し訳ありません」
 「そんなの気にすることないから!こっちは平気だから、とにかくお大事にね」
 「はい、ありがとうございます」

 一般病棟に移ったらまた連絡します、と言って菜乃花は電話を切った。
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