花咲くように 微笑んで
 昼過ぎからはウトウトとまどろんだり、スタッフが行き交うのをぼんやりと眺めて過ごす。

 (そう言えば、ここって宮瀬さんの職場じゃなかったっけ?)

 確かにそのはずなのだが、一度もその姿を見ていない。

 (あれ?ここが持ち場じゃないのかしら)

 そんなふうに思いながら時間をやり過ごし、夜になると照明が絞られた。

 動いていないから眠くないなと思いつつ、仕方なく目をつむる。

 ようやく眠りかけた時、急に周りが慌ただしくなって菜乃花は目を覚ました。

 どうやら年配の女性が救急搬送されてきたらしい。

 (うわ、さっきまでとは別世界)

 時間の流れが一気に速くなったかのように、大勢のスタッフが動き回り、テキパキと処置に当たっていた。

 (今までどこにこんなにたくさんのスタッフがいたんだろう)

 そう思っていると、背の高い颯真の姿が目に入った。

 (宮瀬さん!やっぱりここで働いてるんだ)

 眠気も吹き飛び、菜乃花は皆の様子をじっと見守る。

 張り詰めていた空気がだんだん落ち着いた雰囲気になり、急患のおばあさんのベッドは菜乃花の横に移動してきた。

 カーテンの向こうでドクター達が小声でやり取りするのが聞こえ、やがて少しずつスタッフが部屋を出て行った。
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