花咲くように 微笑んで
三浦が仕事に行くのを見送ると、菜乃花は出口のタクシー乗り場へと向かう。
その途中にカフェがあるのに気づき、菜乃花は吸い寄せられるように店内へ入った。
(カフェなんて久しぶり!)
ホットのキャラメルマキアートを注文し、カウンター席に座ってゆっくりと味わう。
(ふう、落ち着くなあ)
両手でカップを握りしめながら思わず笑顔になった時、ガラス越しにカフェの前を通り過ぎていく颯真の姿が見えた。
マズイ、と肩をすくめると、ふとこちらを見た颯真と目が合ってしまった。
颯真は何やらニヤリと笑うと、店内に入って来てコーヒーを注文してから、さり気なく菜乃花の隣に座る。
「寄り道してもいいのかなー?」
前を見たまま、誰にともなくそう言う颯真に、菜乃花はヒエッ!と身を固くした。
「宮瀬さん、もしやさっき聞いて…?」
「タクシーで真っ直ぐ帰らないといけないんじゃないのかなー?」
颯真はガラスの外に目を向けながら、とぼけた顔で更に呟く。
「あの!お願いします。三浦先生には内緒で…」
菜乃花が両手を合わせると、ようやく颯真は真顔に戻って菜乃花を見る。
「そんなに?カフェに寄っただけで咎められるの?」
「はい、多分…」
「じゃあ、毎日何して過ごしてるの?仕事もまだ復帰してないんだよね?」
「ええ。ですので毎日何もしていません。部屋でひたすら時間を潰しています」
「本当に?息が詰まらない?」
「詰まっているので、こうしてカフェの誘惑に負けてしまった次第です」
うつむいたまま答える菜乃花に、颯真はため息をつく。
「三浦先生、よっぽど君のことが心配なんだな」
「はい。なので、言いつけを破るのも気が引けて…」
「うーん。確かに君はまだ無茶をしてはいけない身体だ。けど、毎日を心穏やかに楽しく過ごすことだって大切なんだ。何か、部屋で楽しめることはない?」
「そうですね。自分の部屋ではないので…」
「そうだろうな。んー、ちょっとここで待っててくれる?5分で戻るよ」
そう言うと颯真はコーヒーを手にカフェを出て行く。
言われた通り待っていると、やがて本を3冊手にした颯真が戻って来た。
「良かったら貸すよ。これは、心理学の観点から人とのつき合い方や処世術なんかについて書かれていて、気軽に読むにはちょうどいい。あとの2冊はマニアックな話だけど、君なら楽しめると思う」
「へえ、面白そう!」
受け取って少しページをめくってみると、どれも興味深い内容だった。
「いいんですか?お借りしても」
「ああ。俺はとっくに読み終わってるから、返すのはいつでもいいよ。あ、夢中になり過ぎないようにね。脳に悪いから、休み休み読んでね」
「はい!とっても楽しみ」
菜乃花は本を胸に抱えて満面の笑みを浮かべた。
その途中にカフェがあるのに気づき、菜乃花は吸い寄せられるように店内へ入った。
(カフェなんて久しぶり!)
ホットのキャラメルマキアートを注文し、カウンター席に座ってゆっくりと味わう。
(ふう、落ち着くなあ)
両手でカップを握りしめながら思わず笑顔になった時、ガラス越しにカフェの前を通り過ぎていく颯真の姿が見えた。
マズイ、と肩をすくめると、ふとこちらを見た颯真と目が合ってしまった。
颯真は何やらニヤリと笑うと、店内に入って来てコーヒーを注文してから、さり気なく菜乃花の隣に座る。
「寄り道してもいいのかなー?」
前を見たまま、誰にともなくそう言う颯真に、菜乃花はヒエッ!と身を固くした。
「宮瀬さん、もしやさっき聞いて…?」
「タクシーで真っ直ぐ帰らないといけないんじゃないのかなー?」
颯真はガラスの外に目を向けながら、とぼけた顔で更に呟く。
「あの!お願いします。三浦先生には内緒で…」
菜乃花が両手を合わせると、ようやく颯真は真顔に戻って菜乃花を見る。
「そんなに?カフェに寄っただけで咎められるの?」
「はい、多分…」
「じゃあ、毎日何して過ごしてるの?仕事もまだ復帰してないんだよね?」
「ええ。ですので毎日何もしていません。部屋でひたすら時間を潰しています」
「本当に?息が詰まらない?」
「詰まっているので、こうしてカフェの誘惑に負けてしまった次第です」
うつむいたまま答える菜乃花に、颯真はため息をつく。
「三浦先生、よっぽど君のことが心配なんだな」
「はい。なので、言いつけを破るのも気が引けて…」
「うーん。確かに君はまだ無茶をしてはいけない身体だ。けど、毎日を心穏やかに楽しく過ごすことだって大切なんだ。何か、部屋で楽しめることはない?」
「そうですね。自分の部屋ではないので…」
「そうだろうな。んー、ちょっとここで待っててくれる?5分で戻るよ」
そう言うと颯真はコーヒーを手にカフェを出て行く。
言われた通り待っていると、やがて本を3冊手にした颯真が戻って来た。
「良かったら貸すよ。これは、心理学の観点から人とのつき合い方や処世術なんかについて書かれていて、気軽に読むにはちょうどいい。あとの2冊はマニアックな話だけど、君なら楽しめると思う」
「へえ、面白そう!」
受け取って少しページをめくってみると、どれも興味深い内容だった。
「いいんですか?お借りしても」
「ああ。俺はとっくに読み終わってるから、返すのはいつでもいいよ。あ、夢中になり過ぎないようにね。脳に悪いから、休み休み読んでね」
「はい!とっても楽しみ」
菜乃花は本を胸に抱えて満面の笑みを浮かべた。