compact
笑顔のカワイイ男性はニコッと笑って
昔の名刺を渡そうとしていた。

「捨てておいてもらえる?
あ、連絡くれてもいいけど。」
と私は、笑顔を作った。

きっと、今の役職の記載の無い
最後の名刺だった。

私はお店を出て、
いつものように会社へ向かった。

暑くても寒くても
暑いとか寒いとか思う前には
会社のあるビルに吸い込まれる。

エレベーターの箱に入って、
増えてく数字を見ながら
苦いコーヒーが舌にまとわりついて
吐く息にコーヒーの香りも混じる。

朝7時30分に出社してるひとは
いつも私しかいない。
私だけの、会社の空間。
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