二人の永遠がこの世界になくても
その願いは叶わない。
春華がこの時代にやってくることを願った日から全然一年も経っていないし、この世界にはそんな力も存在しない。

だけど春華は本気で願っていた。
力と決別できないのなら、世界のほうから忘れてくれることを。

忘れられることは怖い。
自分が生きた証も、家族も友達の中にも自分の存在が残らないなんて。

それでも春華にとって忘れられることこそが、生きていてもいいっていう証明になるんだ。

「でも修行が終わったら春華はどうやって元の世界に戻るの?」

「誰か、グループの奴が俺の為に願ってくれなきゃ無理だ」

「そんな…」

「ここには力を持った人間は居ない。俺達は自分の願いを自分では叶えられない。誰かがふと俺を思い出して願ってくれれば」

「春華が、私が春華を忘れる日までここに居るって言ったのは、私の願いを叶えてくれた日までってことだったの?」

「うん。ヨヅキの人生を賭けた願いを叶えてあげたいって思ったんだ。会った日からずっと」

「どうして?」

「どうしても。だからその日まで、俺の修行に付き合ってよ。情けないけどさ、一人は心細い。でもヨヅキが居てくれれば大丈夫って思える」

「私が春華の存在を言いふらすかもしれないよ?」

「ヨヅキはそんなことしない。そんなことしてもヨヅキにはなんのメリットも無いし、ヨヅキだって一人は嫌だって目をしてる」

「適当なこと言わないで。また見透かしたつもり?」

「分かるよ。ヨヅキは本当はもっと自分を見て欲しかったはずだ」

「何それ。分かんないよ」

「ねぇ、ダメ?一緒に居てよ。この世界にはヨヅキしか居ない」
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