二人の永遠がこの世界になくても
「そこのおうちのお兄ちゃんに会ったことある?」

「お話したことは無いよ」

「お顔は知ってる?」

「うん」

「お兄ちゃんのお母さんは?」

「ママが時々お買い物に行った時にスーパーでお話してるよ」

「俺達がおばさんを呼ぶから、出てきたらね、″お兄ちゃんの高校の制服が欲しい″って、言って欲しいんだ」

「どうして?僕は小学生だから着られないよ」

「お願い。本当は俺が欲しいんだ。春になったらね、そこの高校に行くんだ。でもお金が無くて制服が買えないんだよ。恥ずかしくてそんなこと頼めないんだ」

「お兄ちゃん、可哀想なの?」

「そう。可哀想なんだ」

「…じゃあ僕がおばさんにお願いしてあげる。僕、誰かが嬉しいと嬉しいから」

「ありがとう」

凄い。
よくこんなでっち上げ、ペラペラと喋れるな。
″人の願いを叶える超能力者″っていうより、まるで詐欺師だ。

「じゃあ、ヨヅキ、よろしく」

「え?」

「おばさんを呼んできてくれないかな」

「私が?」

「ヨヅキのほうが普段から交流あるだろ?俺だと怪しすぎる」

「…あーっ!はいはい!分かったよ!」

こうなればヤケクソだ。
願いがちゃんと叶えばどうせこの子もおばさんの記憶も消えるんだから!

立ち上がって、お隣さんの家のドアの前まで突き進んだ。
迷っていたってしょうがない。

勢いで押したインターホン。
五秒くらい待って、インターホンに付いているスピーカーから、「はーい」って聞き慣れた声が聞こえてきた。
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