二人の永遠がこの世界になくても
二つ目の修行をクリアした春華が私の部屋のドアをノックした。

制服に着替え終わって、髪の毛のセットをしている時だった。

「はーい」

「ヨヅキ!どう!?」

嬉しそうにドアを開けた春華は、昨日お隣さんに貰った制服を着ている。

「似合ってるよ。でもそれ、修行が終わったらどうするの?あげたことを忘れてるんだからそのうち無くなってることに気づいちゃうかも」

「ちゃんと返すよ」

「どうやって?」

「んー。また誰かを使っちゃうかも」

「たった一度きりの願いなのに。可哀想に」

あれ?

春華に相槌を打ちながら、私は手を止めた。
コテで軽く巻いた髪に、あとはオイルをつけるだけ。
私はそのオイルを持ったまま、私の部屋の姿見で自分を観察する春華をジッと見た。

そう言えば、歩道橋のサンタの時も、制服を貰った時も、なんで私の記憶は消えていないんだろう。
だってサンタの報道の時、誰も春華のことを憶えていなかった。
インタビューをされている人の中には、春華に願わされたあのお兄さんも居た。
でも何も憶えていないみたいにカメラの前で話していた。

春華と深く関わっているから?
そういうものなのかな…。

私にしっかり記憶が残っていることは″失敗″にカウントされていないみたいだし、そういうものなのかもしれない。

誰かの幸せな願いも、誰かの不幸の為の願いも私は春華と共有している。
共犯者になったみたいだった。

私だけが知っている春華の秘密。
それは誰かにとっては人生が変わるくらいの願いかもしれないのに、私は春華ともっと秘密を増やしたいって思ってしまっている。
その数だけ、春華との絆の証明になると思っていた。
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