二人の永遠がこの世界になくても
「明日の何時?」

「明日って祝日なんだよね?」

「そうだよ」

「じゃあ休みだから十一時からにしよう」

「時間の約束してきたんじゃないの?」

「一緒に行ってくれる人の許可を取ったら連絡するって約束してきたんだ。連絡先聞いてきたよ」

連絡先を交換してきたの?
でも春華はスマホを持っていない。

どうするんだろうって思っていたら、家の電話の受話器を取った。

「これどうやんの?」

「え」

またも文明の違いにびっくりしながら、私は使い方を春華に教えた。
未来ではどうやって離れた人と連絡を取り合っているんだろう。

春華の世界ではスマホも化石なのかもしれない。

「明日の十一時、オッケーだって」

「分かった」

「学校の前で待ち合わせにしたよ」

「うん。猫、見つかるといいね」

「それは見つかるよ。絶対に」

「あ、そっか」

「あはは。ヨヅキ、本当に探しにいくつもりだったの?可愛い」

私に睨まれた春華は首を傾げて見せた。
春華のほうが迷い猫みたいだ。

「ねぇ、可愛いとか簡単に言っちゃダメなんだよ」

「なんで?」

「私だからいいけどさっ…変な期待とかされたらどうすんの?それに春華には大切な人が居るんでしょ?可哀想じゃん」

「それは…」

ほら。否定できない。
結局春華の心の一番大切なところには、顔も知らないその人が居るんだから。

「今度可愛いって言ったらもう協力しないからね」

春華を部屋から追い出してドアを強く閉めた。
私の名前を呼ぶ声が聞こえていたけれど、二、三分くらいしたら足音が遠ざかっていった。

本当に私って可愛くない女。
素直に嬉しいって言えばいいのに、なんで可愛くできないんだろう。
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