二人の永遠がこの世界になくても
翌日、私と春華は十時半くらいに家を出た。

春華に怒ってからちょっと気まずかったけれど、夜ご飯の時にはいつも通り接してくる春華に助けられた。

待ち合わせは学校の校門前。
私達も早めに出たのに、校門前には既に一人の女の子が立っていた。

「えーっと」

「莉奈です。今日はよろしくお願いします」

「りなちゃん、ね。私は夜月。春華の…」

「従姉妹の方が来てくれるって聞いてます。知り合いでも無いのにすみません」

「あぁ、うん。そう、従姉妹なんだ。見つかるといいね。どんな子なの?」

「この子です」

莉奈ちゃんが私達に向けたスマホの画面を春華が覗き込んだ。
スクリーンに触れるように手の平をかざしたから、まさか“記憶させる”んじゃないかと思ってヒヤヒヤした。

「可愛い子だね」

「ふふ。ありがとうございます」

春華の“可愛い”に、素直に微笑む莉奈ちゃん。
それは猫に向けられたものだけど自分のことみたいに嬉しそうに微笑む莉奈ちゃんは可愛い。

猫は白い毛に、首元に三つの斑点模様。
ビー玉みたいな丸い目が私達を見つめているみたいで印象的な子だ。

「大丈夫。すぐに見つかるよ。俺が見つけてあげるから」

「春華さん…ありがとうございます」

「うん。安心してね」

「あの…もし見つかったらこの子と遊びに、うちに来てくれますか?」

「え?うん、もちろん」

「はい!夜月さんもぜひ!」

莉奈ちゃんは大人しそうだけどけっこう積極的で、表情豊かな子だ。

たぶん猫と遊んで欲しいのは口実で、春華に一目惚れなんじゃないかなって思った。

私の目ははっきりと見るのに、春華の顔はあんまり直視できないみたいだった。

やっぱり莉奈ちゃんは可愛いし、私はちっとも可愛くない。

だって、遊びになんか絶対に行かない。
どうせ春華のことなんか忘れるんだからって、
心底ホッとしてる自分が居る。
< 39 / 115 >

この作品をシェア

pagetop