二人の永遠がこの世界になくても
「え…?」

「ヨヅキのことが好きだ。たぶん、恋愛感情で」

私を?春華が?
“大切な人”はどうなったの?
でもここでそれを聞いたらきっと全部が無かったことになってしまう。

千年も時を超えていたら心変わりくらい、どうってこと無い罪だろうか?

「でもダメだよな」

「ダメ?」

「俺はこの場所で誰かを好きになる資格は無い」

「でも春華…私も…私も春華が好き」

繋いだ手を離したのは春華だった。
春華のほうから繋いだ手を。

「俺はヨヅキが苦しいのは嫌だよ。俺達は一緒には幸せになれない」

「なんで?」

「なれないだろ…。ヨヅキはなんにも悪くない。でもさ、約束は守るから」

「約束?」

「ヨヅキが俺を忘れる日まで、俺はここにいる」

「だったら私だってその日まで春華が世界で一番大切で、好きだよ。絶対に」

「ありがとう…」

春華の髪の毛にくっついていた桜の花びらはいつのまにか落ちていた。

あれほど見たいと願っていた桜を春華はあまり見ることなく、ずっと私を見ていた。

見られていたら泣けない。

百パーセント失恋すると分かっていた恋が、失恋なのかなんなのか分からないまま。

私が春華を失う未来は確定した。
ただ一つ、私が一生で一度の願い事で、春華を失くさない未来を願わない限り。
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