二人の永遠がこの世界になくても
パパの部屋のドアを開けた。
もう随分と片付いていて、春華が来た時よりも部屋が殺風景になっている。

「今日は入ってないから気づかなかったでしょ。昼間は外に出てたもんね」

「どういうこと?物がすごく少なくなってる」

「パパね、出てくの。その為に帰ってきたんだよ。ママとの話し合いと、荷物をまとめる為にね」

初めてうちにやってきた時は、ひょうひょうとしていたくせに、今のほうがずっと動揺しているみたいだった。

「義父なの」

「ギフ?」

「血が繋がっていない父親って意味だよ」

「血?」

「だから、遺伝子が繋がってないってこと。春華はそもそも誰の遺伝子で自分が産まれたのか知らないと思うけど、その遺伝子が私とパパには繋がってないの。私の中には知らない誰かの血が流れてる」

「知らないの?」

「うん。私が産まれる前、お姉ちゃんが一歳とちょっとの時に離婚してるから」

「リコンって?」

「結婚…家族になりましょうって契約を解除すること」

「なんで?」

「この世界では結婚することも手続が必要なの。学校に通いたいからって簡単にできないのと一緒だよ。手続きをして結婚するから、離婚するのにも手続きが必要なの。他人になりましょうっていう手続きがね」

「大変なんだな。なんでそんなに大変なことをして家族になるのに、リコンするの?」

「暴力」

「暴力…」

「そう。暴力は知ってるでしょ」

「俺が失敗したあいつがコーチにされてたことだね」

「そう。ママも私の本当の父親に暴力ふるわれてて。それで離婚したの。しばらくは私とママ、お姉ちゃんと三人で暮らしてて。私が小学生になる時におじいちゃん…ママのお父さんがこの家を建ててくれたの。その頃にパパと出会ったママは、すぐにパパとの結婚を決めた」

「家族は何回でも作れるの?」

「望めばね」

「何回も大変なことするんだ」って、春華は不思議そうに呟いた。
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