二人の永遠がこの世界になくても
「そうだけど。私達のせいなんて言われたら胸糞悪いよ」

「言わせとけばいいじゃん。もう関わんないんだから…。こんなことで夜月が自分の人生壊すことないじゃん。私、そのほうが嫌だよ!」

「ありがとう。でもなんか…説明できないけどやっぱなんか気持ち悪いんだよ…。このまま流せない」

私達は教室に戻った。
ホームルームはとっくに終わってるんだから早く帰ればいいのに、まだほとんどのクラスメイトが残っていた。
いつもならこんなに残ったりしてないのに。

何食わぬ顔をして、私達を待ってたんだって分かった。

「ね…、結局なんだったの?」

「こんなこと思いたくないけどさ、やっぱ除け者にとか…してた?」

「まぁ、なんか感じっていうか、あの子だけ違ったもんね」

私達を擁護するようで責める言い方。
自分達は関係無いけれど、他所で起こっているイジメならエンタメ感覚なのかもしれない。

「そんなことしてないよ!ただの被害妄想!」

「でも普通に仲良くしてたんならそんなこと感じなくない?」

「だから被害妄想なんだって!嫌ならうちらに言えば良かったんだよ」

「言えるわけないじゃんねー。そんなこと言ったらもっと煙たがられて完璧にハブかれるじゃんー」

逃げるが勝ち。
その言葉の意味がよく分かった気がする。

このままあの子が退学すれば人生の一部では“負け”のレッテルが貼られてしまうのかもしれない。

でも本当に私達が憎かったのなら、被害者になって逃げてしまえば、私達がどんなに反論しても第三者には届かない。

私達は“逃げるほどあの子を追い込んだ”。
それだけが事実になる。

「大丈夫。あの子は辞めないよ」

「なんで?もう辞めるって言ってるじゃん」

「私が辞めるから」

「はぁ?」

教室がザワザワと騒がしくなった。
傍観していた人達もヒソヒソと思い思いに囁き合う。

「何言ってんの?」

「私が学校を辞める。私達が怖いなら私が居なくなれば解決するんでしょ?いじめたって言うんなら責任取るよ」

「認めんの?」

「イジメは認めない。本当に私達は何もやってない。だからこんなことになってんのもショックだよ。でもそれで解決するんなら私はそれでもいい。誰かの人生を変えてしまうくらいなら、自分がどうにかなったほうがマシだから」

「夜月…撤回してよ…」

「いい子ぶったって、もう認めたことになるんだから」

「それでもいいよ。もう…いいよ…」

いい子ぶってるわけじゃない。
いつもみたいにニコニコしてやり過ごそうとしているわけでもない。

なんて強がってみたって、嘘だ。

責められるのが怖いだけ。
私の存在が誰かの人生を壊してしまうのが怖いだけ。

親友をここに残して押し付けて、逃げようとしているのは私だ。
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