二人の永遠がこの世界になくても
冬休みに入った。

終業式の日まで、春華は“ヨヅキが通っている学校を見たい″と言って、高校の前までついてきた。

一日だけじゃ無い。
毎朝だ。

通学路でたまにクラスメイトとすれ違っては不思議そうな顔をされるから「従兄弟なの」って言って誤魔化した。

そのたびに春華は「イトコじゃなくて春華だよ」なんて言って私を困らせた。

「ただいまー」

「夜月、おかえりなさい。春華くんが退屈だーってさっきからうるさいの」

うるさいの、なんて言うけれど、ママの顔はどことなく嬉しそうだった。
話し相手ができて、ママにとっては本当に良かったのかもしれない。

「ヨヅキ!おかえり!」

「ただいま」

「どっか遊びいく?」

「行くなら明日にしようよ」

「なんで?」

「イブだから。夕方くらいになったらイルミネーションが見れるよ」

「へぇ。それって見たほうがいいの?だったら明日にする」

「うん。着替えてくるね」

「ちょっと夜月、成績表は!?」

ママが嫌な単語を発し始めた。
受験生でもなんでもない今は、成績表なんてどうでもいいのに。

こういうのはラストスパートが肝心なのだ。と、思う。
どんなに中間地点が良くったってスタミナ不足になったり最後に転んでしまうことだってあるんだから。

今は体力を温存する時なのだ。と、言い聞かせている。

鞄から取り出した成績表を無言でママに突き出したら、案の定のしかめっつら。
ブーブー言い出したから私はさっさと階段を駆け上った。

その後ろから春華が追いかけてくる。
「ヨヅキはすぐママさんを怒らせるな」ってなんだか楽しそうだった。
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