二人の永遠がこの世界になくても
莉奈ちゃんはもしかして前回のことも忘れてないんじゃないかってちょっと心配だった。

その不安に上塗りするみたいに莉奈ちゃんは「なんか初めてな気がしないし学校以外で会ったことあったかなって思った」って言った。

黙っている私に「でも委員会か。記憶には無いけど」って言った。

「おコナは元気だよ。もうおばあちゃんだけど」

「莉奈ちゃんは、いつもそんな感じなの?前に学校で会った時とは雰囲気が違いすぎるよね」

「うちはあいつと違って親が太いからさぁ。あの学校だって性には全然合ってない。でも私、あいつみたいにバカじゃないから。賢い生き方ってやつ?」

「そうかな…」

「え?」

「莉奈ちゃんが本当にあいつを救いたいなら一緒にチームを抜けてあげなきゃまた繰り返すんじゃないかな。“次”は絶対にもう無いよ。気をつけてね」

「…うっさいな」

莉奈ちゃんは小さい声で吐き捨てて、ヤンキー達の中に戻っていった。

「…春華!大丈夫!?」

私の腕にずっと体を預けていた春華は目を閉じたままコクンって頷いた。

Tシャツをめくってみる。
押さえていた脇腹は綺麗に戻っていて刺し傷なんてどこにも見当たらない。

ただTシャツには付着した血の痕がしっかりと残っている。

「なんで…」

「コレまで消えたらリナちゃんが変に思うだろ」

「そんなことまで調整できるの!?」

「“周りにバレないこと”が一応鉄則だからね。リナちゃんも今日のことを忘れてくれるならいいんだけど、一度願いを叶えてたらたぶん無理だから」

「やっぱりそうなんだね。春華、立てる?帰ろう、うちに」

「うん。ヨヅキ……帰ったら話したいことがある」

「私も…。今日のこともだし、そろそろ話してくれるよね?隠してること」

「うん。ちゃんと話すよ」

私達は手を繋いでうちまでの道を歩いた。
陽が落ちても蒸し暑さは残っているけれど、汗ばむ体も湿った手の平も不快じゃない。

春華とならどんな状況でも、どこまででも歩いていける気がした。
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