私の幼馴染が強引すぎるけど、とにかく可愛すぎる!
第5話
あれは、中学生時代。我妻の人気が徐々に爆発してきた時期。
私は脈絡もなく放課後、数人の女子から昼休み呼び出されたのだ。
場所は校舎裏。嫌な予感がしたけど、行ってみれば案の定。
「幼馴染みかなんか知らないけど、我妻君に近づかないで!」
開口一番、理不尽な難癖を吐き捨てられてしまった。
女子グループのリーダーらしき生徒は目を見開き、眉を吊り上げた。
すると、周囲の女子が「そうだそうだ」と加勢の声を放つ。
「……近づくも何も」
それが当たり前になりすぎて、反論の言葉が出なかった。
家がお隣同士で家族ぐるみの付き合い。登下校もずっと一緒だ。
誰かに言われたでもなく自然の流れでそうなっている。とどのつまり、彼女は我妻のことを恋愛的に好きだからこそ私を目の敵にしているのだろう。だが、我妻に隠れて私を呼び出し、取り囲む時点で性格に難ありだと思う。
と、脳内では考えつつも実際は恐怖心も相まって言葉に詰まった。
私の態度に彼女らは気を良くしたのか更に猛追してくる。
「第一、アンタ調子乗ってんじゃないの。気持ち悪い」
「そうよ。お前じゃ吊りあってないんだから消えてよね」
「皆言ってるよ。結衣ちゃんって不気味だよねって」
きゃははと笑われてしまう私。悔しさと悲しさが募る。
何もしていないのに、ここまで暴言を吐かれた事実に思考が止まる。
わかってる。吊りあってないなんて私自身が一番分かってる。
「――おい、誰が不気味だって?」
その声は、場を凍り付かせるには充分だった。
私を取り囲んでいた数人の女子が一斉に息を呑んだ。
彼の荒い足音が酷く響く。――そして止まった。
「結衣、大丈夫か」
我妻だった。俯いていた私はぎこちなく顔を上げる。
私の顔を見た我妻は一瞬柔らかな笑みを見せた後、目を細めた。
明らかに怒っている。……いや、ガチギレのソレだった。
「クラスにいねぇから探してみれば。お前ら、なにやってんの」
「ち、違うの我妻君。これは結衣ちゃんと仲良くなりたくて!!」
「校舎裏で取り囲んで、結衣を泣かせることが、か?」
この時、私の前に立つ我妻の背中がいつもより大きく見えた。
顔は見えなかったけど、女子たちの反応を見るに想像に難くない。
私を守ろうとする姿は、とってもかっこよかった。
……我妻は私にとって自慢の幼馴染なのだ。
「アンタらがしたこと、俺は二度と忘れないから」
リーダー格らしき女子がついに泣き始めてしまう。
それを見て軽く舌打ちした我妻はようやく振り返って私を見た。
怒り心頭の我妻は私の手を強く取り、輪を抜ける。
ふたりして去ろうとすると、なぜか我妻が足を止めて言った。
「……そうそう、お前らみたいに群れないと何もできない奴らが一番嫌いだ。あと、そこのお前、俺のことが好きなんだって? 無理、性格終わってんじゃん。……お前らやってること餓鬼だろ。……ばっかみてぇ」
言葉数が少ない我妻にしては珍しい口の周り具合。
よほど今回の出来事が気に食わないらしい。
「次結衣に近づいてみろよ。ただじゃおかねぇ」
我妻は「行くぞ、結衣」と私の手を取ったまま歩き始めた。
この事件から、我妻は過保護になった。
無愛想で、たまにわがままだけど、私の目には我妻がヒーローに映った。吊りあっていないのは理解している。だけどこうして一緒にいられるのは幸せなのだろう。
これからもずっと、こんな関係が続けばいいな。私はそう思った。
ただ、彼が誰かを好きになった時は心から応援しようとも、思ったんだ。
私ばっかり優先したら、彼は自分の時間を失ってしまうから。
私は脈絡もなく放課後、数人の女子から昼休み呼び出されたのだ。
場所は校舎裏。嫌な予感がしたけど、行ってみれば案の定。
「幼馴染みかなんか知らないけど、我妻君に近づかないで!」
開口一番、理不尽な難癖を吐き捨てられてしまった。
女子グループのリーダーらしき生徒は目を見開き、眉を吊り上げた。
すると、周囲の女子が「そうだそうだ」と加勢の声を放つ。
「……近づくも何も」
それが当たり前になりすぎて、反論の言葉が出なかった。
家がお隣同士で家族ぐるみの付き合い。登下校もずっと一緒だ。
誰かに言われたでもなく自然の流れでそうなっている。とどのつまり、彼女は我妻のことを恋愛的に好きだからこそ私を目の敵にしているのだろう。だが、我妻に隠れて私を呼び出し、取り囲む時点で性格に難ありだと思う。
と、脳内では考えつつも実際は恐怖心も相まって言葉に詰まった。
私の態度に彼女らは気を良くしたのか更に猛追してくる。
「第一、アンタ調子乗ってんじゃないの。気持ち悪い」
「そうよ。お前じゃ吊りあってないんだから消えてよね」
「皆言ってるよ。結衣ちゃんって不気味だよねって」
きゃははと笑われてしまう私。悔しさと悲しさが募る。
何もしていないのに、ここまで暴言を吐かれた事実に思考が止まる。
わかってる。吊りあってないなんて私自身が一番分かってる。
「――おい、誰が不気味だって?」
その声は、場を凍り付かせるには充分だった。
私を取り囲んでいた数人の女子が一斉に息を呑んだ。
彼の荒い足音が酷く響く。――そして止まった。
「結衣、大丈夫か」
我妻だった。俯いていた私はぎこちなく顔を上げる。
私の顔を見た我妻は一瞬柔らかな笑みを見せた後、目を細めた。
明らかに怒っている。……いや、ガチギレのソレだった。
「クラスにいねぇから探してみれば。お前ら、なにやってんの」
「ち、違うの我妻君。これは結衣ちゃんと仲良くなりたくて!!」
「校舎裏で取り囲んで、結衣を泣かせることが、か?」
この時、私の前に立つ我妻の背中がいつもより大きく見えた。
顔は見えなかったけど、女子たちの反応を見るに想像に難くない。
私を守ろうとする姿は、とってもかっこよかった。
……我妻は私にとって自慢の幼馴染なのだ。
「アンタらがしたこと、俺は二度と忘れないから」
リーダー格らしき女子がついに泣き始めてしまう。
それを見て軽く舌打ちした我妻はようやく振り返って私を見た。
怒り心頭の我妻は私の手を強く取り、輪を抜ける。
ふたりして去ろうとすると、なぜか我妻が足を止めて言った。
「……そうそう、お前らみたいに群れないと何もできない奴らが一番嫌いだ。あと、そこのお前、俺のことが好きなんだって? 無理、性格終わってんじゃん。……お前らやってること餓鬼だろ。……ばっかみてぇ」
言葉数が少ない我妻にしては珍しい口の周り具合。
よほど今回の出来事が気に食わないらしい。
「次結衣に近づいてみろよ。ただじゃおかねぇ」
我妻は「行くぞ、結衣」と私の手を取ったまま歩き始めた。
この事件から、我妻は過保護になった。
無愛想で、たまにわがままだけど、私の目には我妻がヒーローに映った。吊りあっていないのは理解している。だけどこうして一緒にいられるのは幸せなのだろう。
これからもずっと、こんな関係が続けばいいな。私はそう思った。
ただ、彼が誰かを好きになった時は心から応援しようとも、思ったんだ。
私ばっかり優先したら、彼は自分の時間を失ってしまうから。