春が追い付く二拍手前。
「……」
 フユの起動音が消えた後、ハルはパチリと目を開けた。

 そして、腕の中のフユを、ギュッと抱きなおし、そっと起き上がる。

「……私の傍には、まだお前がいたんだな……」

 ハルは、目を腕でこすると、ちょっとだけ笑った。
 笑って、腕の中のフユに、そっと頬刷りをした。
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