リフレイン
そこまで言って、秋希の笑顔は照れ笑いに変わった。
それから、視線が落ちる。徐々に、秋希から笑顔が消えていく。
『でもね、僕のことは忘れてくれていい。僕の気持ちも、僕との思い出も、全部全部、忘れてね』
秋希は泣きそうになりながらも、口角を上げる。
そして、手を振った。
『バイバイ、理桜ちゃん。大好きだよ』
動画は、そこで終わった。
理桜は動けなかった。秋希の状況や言葉を処理するのに、時間が必要だった。
スマホの画面がそっと暗くなったとき、新たにメッセージが届く。
また画面を開き、メッセージに目を通した。
“はじめまして、朝倉秋希の兄の、一颯です。今の動画は、一ヶ月前に弟に頼まれて撮ったものです。弟は理桜さんに見せるつもりはないと言っていたのですが、俺は見せるべきだと思い、送りました”
理桜は会ったこともない相手にメッセージを送ることに緊張しながら、文字を打っていく。
“はじめまして、向坂理桜です。動画、ありがとうございます”
それを送ってから、病室で笑う秋希の姿を思い出す。
“秋希は、元気ですか?”
送られたメッセージを見て、理桜は送信を取り消そうとした。
だが、それより先に返事がきた。
“今朝、息を引き取りました”