リフレイン
「……は? え、待って……嘘……」
理桜は混乱したまま、秋希のスマホに電話をかける。
「はい」
何度もかけてきた電話口から、知らない男の人の声がする。
その動揺も相まって、理桜は言葉に詰まった。
「あの、秋希が……秋希が、死ん、だって……」
「……はい」
声の暗さから、それが真実なのだと思い知らされる。
理桜も相手も、積極的に言葉を発しない。
重たい沈黙の中で、理桜は感情を押さえ込み、一筋の涙をこぼす。
夜空に浮かぶ月は、理桜を闇から引き上げようとしているように見えた。
「……秋希に、会いたい……」
ずっと、言いたくても言えなかった言葉。
涙だって、堪えきれなくなっていた。
「会いますか?」
電話の向こうから、躊躇いつつ提案される。
「……会いたいです」
その表情は覚悟を決めていた。
✿
一颯は、出入り口で理桜が葬儀場に到着するのを待っていた。
月明かりに照らされて、彼女はやって来る。
「向坂理桜さんですよね。はじめまして、朝倉一颯です」
「……はじめまして」
腰を曲げた理桜が顔を上げると、弱っているのがわかった。
一颯は、言葉に迷う。
来てくれたことへの感謝か。彼女への気遣いか。
どれも、違う気がした。