リフレイン

『まさか。理桜ちゃんは知らない。教えてない。このことを知っちゃうと、きっと、理桜ちゃんは耐えられない。だから、僕からお別れをしたんだよ』


 秋希が言っていた、儚さや弱さ、そして強さ。聞いたときは矛盾していると思っていたが、理桜の姿を実際に見て、一颯は理解した。


「秋希は……いつから、病気だったんですか?」


 振り返って一颯に話しかけるが、理桜は秋希の傍を離れようとしない。


「高校時代に罹った病気が、年が明けたくらいに再発したんです。今回は治る見込みがなかったようで……」


 一颯はその先を言えなかった。


 理桜の視線は、また秋希に移る。


「そんなに前から一人で闘ってたなんて……言ってよ……」


 理桜の悔しそうな声を聞いて、一颯は知らないとはいえ、あんなことを言ってしまったことを後悔する。


 このままでは、理桜が秋希に囚われてしまうような気がした。


「……秋希は、貴方に、自分のことは思い出にしてほしい、なんなら、忘れて他の人と幸せになってほしいと」
「忘れませんよ、秋希のことは」


 理桜の力強い声が遮った。


「本当は、忘れようと思っていました。でもそれは、秋希が生きていたらの話です」
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