リフレイン
秋希の思いが無下にされた気分だった。
だけど、理桜の真剣で、寂しそうな横顔を見ると、なにも言えない。
「私は、これからも秋希がいない世界を生きていくんです。無理に秋希の願いを聞いて、心を殺しながら生きていくなんて、できません」
『理桜ちゃんは、一人で立つことができる強さのある女性だ』
それをひしひしと感じる佇まいだった。
理桜は今一度、秋希の頬に触れる。
「……秋希、メッセージありがとう。私だって、秋希に全部気持ちをあげたいけど……怒られそうだから、やめておく。少しだけ、これから出会うかもしれない誰かに残しておくよ」
理桜は一歩、後ろに下がった。
動画の秋希と同じく、涙を浮かべながら笑顔を作る。
「バイバイ、秋希。大好きだったよ」
そして安置室を出ていく理桜の背中を、一颯は見ていることしかできなかった。
一人残った一颯は、ゆっくりと秋希に近寄る。
止まってしまった、弟の時間。
そうは感じさせない表情だが、触れれば嫌でも思い知らされる。