リフレイン

「こんな写真、いつの間に撮ってたんだか」


 彼女は、彼の痕跡がなくなりつつある自宅を思い返して、苦しくなる。


 彼が存在しないことに慣れてしまったのは、つい数週間前の話だ。家に一人でいることに対して、なんとも思わない自分がいた。それに気付き、またさらに落ち込んだのは、言うまでもない。


「そういえば……この時期は遠出しなかったんだっけ。珍しく、彼が誘ってこなくて」


 家の中から場所が変わると、季節まで変わっていた。



 冬。

 駅前のイルミネーションの写真。


『冬と言ったら、イルミネーションだよね』


 相変わらずの、季節を感じるお出かけの提案により、足を運んだ。

 駅前の通りを埋め尽くす、カラフルな光。いつもは景色に溶け込んでいるその光に、彼女は初めて圧倒された。


「不思議だったなあ……ただの光なの。それなのに、あんなにも暖かく感じた。彼も、そうだったらよかったのに」


 イルミネーションを見ていても、彼は悲しそうだった。

 もう、その横顔は残したくなかった。ただ、彼女の記憶にあるだけ。


「最後まで、彼がなにを思って景色を眺めているのか、聞けなかった……だって、怖かったの。私との時間に飽きて、終わりにしたい、とかだったらどうしようって」


 彼女の声が震える。


 結局、恋人の時間が終わりを迎えてしまったこともあり、彼女の苦しみは現実だったように思わされてしまう。
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