天妃物語 〜鬼討伐の条件に天帝の子を身籠ることを要求されて〜
「……まさか人がいないなんて思いませんでした。でも夜の山は野犬がうろうろしていて危険なんです。どこか休める場所を探しましょう」
私はそう言って紫紺とひとつひとつ廃墟の家を覗き、ひと晩休めそうな家を探します。
公家や貴族の寝殿と違って平民の住居は粗末な造りをしていて、雨風にさらされた土壁には穴が開いていたり、屋根が半分崩れていたり、ほとんど野外と変わらないような酷い状態でした。
でもふと気付く。
廃墟の家に入って中をたしかめると、すべての家に白い小石が置かれていました。最初は偶然かと思っていたのですが、どこの家に入っても白い小石が置いてあるのです。
「いったいなんでしょうか……」
呪いの類いでしょうか。首を傾げてしまう。
しかし考えても分かりません。
今は今夜の寝床を探すのが先決です。三歳の幼い子どもと赤ちゃんを休ませてあげなければならないのですから。
こうして集落中を回って、ようやく休めそうな家を見つけます。
「ここなら大丈夫そうですね。紫紺、青藍、今夜はここで休みましょう」
さっそく中に入ってみます。
狭いですが壁や屋根に穴は開いていません。ここなら大丈夫ですね。
私は安心しましたが、でもいつまで待っても紫紺が入ってきません。
「紫紺、どうしました?」
声をかけてたしかめます。
でも紫紺はというと、今にも壊れそうな家を見て愕然としていました。
「こ、ここなのか?」
驚きを隠しきれない紫紺に私は首を傾げましたが、「ああそういうことですか」と納得します。
紫紺は京の都で生まれ、広い寝殿でなに不自由なく育ったのです。このような粗末な住居は見るのも入るのも初めてなのです。まだ三歳ですからね、仕方ないですね。
私は苦笑してからかいます。
「大丈夫、ひと晩くらいで壊れたりしませんよ。それとも怖くなってしまいましたか?」
「こ、怖くない! オレはそんなんじゃない!」
紫紺はハッとして声を上げると私と一緒に家に入りました。
私は火打石を見つけると囲炉裏に火をおこします。囲炉裏の薪が残っていたので助かりましたね。
囲炉裏に暖かな火が灯り、狭い室内を橙色に染めました。
私は青藍を膝に抱っこし、紫紺が正面にちょこんと座ります。
囲炉裏の灯かりで私と紫紺の影が壁に長く伸びて、紫紺が興味深そうに手を上げたりして動きを楽しみだしました。無邪気な様子が可愛らしいです。
私はそう言って紫紺とひとつひとつ廃墟の家を覗き、ひと晩休めそうな家を探します。
公家や貴族の寝殿と違って平民の住居は粗末な造りをしていて、雨風にさらされた土壁には穴が開いていたり、屋根が半分崩れていたり、ほとんど野外と変わらないような酷い状態でした。
でもふと気付く。
廃墟の家に入って中をたしかめると、すべての家に白い小石が置かれていました。最初は偶然かと思っていたのですが、どこの家に入っても白い小石が置いてあるのです。
「いったいなんでしょうか……」
呪いの類いでしょうか。首を傾げてしまう。
しかし考えても分かりません。
今は今夜の寝床を探すのが先決です。三歳の幼い子どもと赤ちゃんを休ませてあげなければならないのですから。
こうして集落中を回って、ようやく休めそうな家を見つけます。
「ここなら大丈夫そうですね。紫紺、青藍、今夜はここで休みましょう」
さっそく中に入ってみます。
狭いですが壁や屋根に穴は開いていません。ここなら大丈夫ですね。
私は安心しましたが、でもいつまで待っても紫紺が入ってきません。
「紫紺、どうしました?」
声をかけてたしかめます。
でも紫紺はというと、今にも壊れそうな家を見て愕然としていました。
「こ、ここなのか?」
驚きを隠しきれない紫紺に私は首を傾げましたが、「ああそういうことですか」と納得します。
紫紺は京の都で生まれ、広い寝殿でなに不自由なく育ったのです。このような粗末な住居は見るのも入るのも初めてなのです。まだ三歳ですからね、仕方ないですね。
私は苦笑してからかいます。
「大丈夫、ひと晩くらいで壊れたりしませんよ。それとも怖くなってしまいましたか?」
「こ、怖くない! オレはそんなんじゃない!」
紫紺はハッとして声を上げると私と一緒に家に入りました。
私は火打石を見つけると囲炉裏に火をおこします。囲炉裏の薪が残っていたので助かりましたね。
囲炉裏に暖かな火が灯り、狭い室内を橙色に染めました。
私は青藍を膝に抱っこし、紫紺が正面にちょこんと座ります。
囲炉裏の灯かりで私と紫紺の影が壁に長く伸びて、紫紺が興味深そうに手を上げたりして動きを楽しみだしました。無邪気な様子が可愛らしいです。