天妃物語 〜鬼討伐の条件に天帝の子を身籠ることを要求されて〜
「貴様らのことは一度として忘れたことはない! 貴様らのもたらす混沌(こんとん)を今日ここで終わらせる!!!!」

 黒緋はそう言うと強大な神気を発動しました。
 (こぶし)を握りしめて神気を(まと)い、突っ込んできた渾沌(こんとん)を殴りました。それは一撃必殺。
 (こぶし)渾沌(こんとん)の頭部を破裂させ、すかさず腹部に強烈な膝蹴りが入ります。
 こうして戦いながらも黒緋は紫紺の動きを目で追い、腰に携えていた刀を投げました。

「紫紺、使え!」
「ありがと!」

 紫紺が刀を受け取ります。
 そして上空の窮奇(きゅうき)を見上げたと思うと渾身(こんしん)の力で投げつける。

「えいっ!」
「ギャアアア!!」

 窮奇(きゅうき)が悲鳴を上げて墜落(ついらく)しました。翼に見事に命中したのです。
 しかし窮奇(きゅうき)は翼が折れたとしても紫紺に猛然と襲いかかる。でもシュルリッ!! 寸前で黄金色(こがねいろ)の布帯が窮奇(きゅうき)に巻きついて動きを封じました。

「ははうえ!」
「あなたには指一本触れさせません。私も一緒に戦います」

 紫紺は私が守ってあげるのです。
 おんぶしている青藍も「あいあ〜!」とはしゃいだ声をあげます。分かっています、あなたも一緒に戦うのですよね。

「黒緋様、紫紺、離寛、援護します!!」

 遠い昔、私たちは四凶(しきょう)と戦いました。
 でもその時は黒緋が一人で戦いに(おもむ)いて討伐することは叶いませんでした。
 私も一人で封印術を発動し、一人ですべてを(うしな)いました。
 しかし今、戦っているのは黒緋、紫紺、離寛、私。それに青藍が応援しています。あの時とは違って一人で戦う者などいません。今ここにすべてが揃ったのです。

「ああ、頼んだぞ鶯!!」黒緋が檮杌(とうこつ)を連打で殴りながら言いました。
「ははうえ、ありがと!」紫紺が刀を構えて窮奇(きゅうき)に攻撃を仕掛けています。
「天妃様、至極光栄です」離寛が饕餮(とうてつ)と戦いながら(うやうや)しく言いました。
 私は大きく頷いて、全身全霊の神気を集中します。
 四凶(しきょう)は四体。全体の動きを捕捉して神気を発動する。すると瑠璃色(るりいろ)の布帯が()()(へび)のように近づいて四体にそれぞれ絡みつきます。
 それは千切られてしまうけれど、また新たな布帯がすぐに絡みついて四凶(しきょう)の動きを邪魔します。
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