天妃物語 〜鬼討伐の条件に天帝の子を身籠ることを要求されて〜
「天帝に仕えるものを犯すのが愉快でなあ。特に斎王に仕える伊勢の白拍子を犯すのは格別だろう」
「最初から私を狙っていたんですね!」
「当たり前だ。貴様こそ鬼から逃げられると思ったか」
そう言うと鬼が私を押し倒しました。
手足を振り回して暴れるけれど、鬼が力任せに夜着を引き裂いていく。
鬼のごつごつした手が私の足を鷲掴みます。
「っ、嫌です! 離しなさい……!」
「それで抵抗のつもりか。もっと逆らってみせろ」
「あっ、やめ……!」
強引に足を開かされました。
緩んだ腰巻が乱れて、太ももが鬼の前にさらされます。
「ああ、美味そうだ。この血肉を鬼神様に献上せねばならぬとは……」
「いやっ、嫌です!」
無我夢中で暴れました。
足を振り上げて鬼の巨体を蹴りつけますがびくともしません。
でもこのまま好きに犯されて食い荒らされるなど絶対嫌です。
私は暴れまわって、ふと手が小太刀に届きました。瞬間。
「苦しんで死になさい!!」
グサッ!!
肉を突き刺す感触。
私は小太刀を鬼の顔面に突き刺したのです。
人間でないのなら躊躇いません。突き刺した小太刀を抉るように捻ってやります。
「許してあげませんっ、死んで詫びなさい……!」
「クッ、グアアアアアッ……!!」
鬼が絶叫してのたうち回ります。
逃げるなら今!
ドカッ! 鬼が怯んだ隙に巨体を蹴り飛ばしました。
鬼の下から飛び出して、御簾をくぐって床の間から逃げ出しました。
素足のまま格子を越えて転がるように庭園に出ます。
鬼が追ってくる気配に全身の血の気が引いていく。
急いで屋敷を出ると、月明かりだけを頼りに夜の都を走りました。
人の気配を感じません。野犬の遠吠えすら聞こえません。はあはあと自分の息が乱れる音だけが響いています。それは未だ鬼の結界内にいるということ。
背後に迫る鬼の気配に恐怖が高まっていきます。
これほど広範囲に結界を張れる鬼が普通の鬼であるはずがありません。やはり伊勢から私を追ってきた鬼。捕まれば犯され、人の身などいともたやすく引き裂かれるでしょう。
それだけは駄目です。絶対駄目です。
もし私が死ねば伊勢の斎王に危険が及んでしまいます。それだけは阻止せねばならぬのです。だから私はできるだけ生き抜いて、できるだけ遠くへ逃げなければ。
私は恐怖で震える体を叱咤して走り続けました。
でも曲がり角を曲がった、その時。
「うわっ!」
ドンッ! なにかにぶつかりました。
衝撃に跳ね飛ばされそうになるも、力強い腕に抱きとめられます。
「大丈夫か?」
頭上から心配そうにのぞき込まれ、私は驚きで目を丸めました。
ぶつかったのは黒の絹生地に朱色糸の刺繍を施した狩衣姿の男だったのです。
鍛えられた体躯の男は精悍ながらも息を飲むほど美しく整った顔立ちをしていました。
思わず凝視してしまう。なぜか胸の奥がざわついて言葉を失う。
そして男も私を見て一瞬だけ驚愕しました。でもそれは見間違いかと思うほど一瞬で、すぐに男は鷹揚とした笑みを浮かべました。
「最初から私を狙っていたんですね!」
「当たり前だ。貴様こそ鬼から逃げられると思ったか」
そう言うと鬼が私を押し倒しました。
手足を振り回して暴れるけれど、鬼が力任せに夜着を引き裂いていく。
鬼のごつごつした手が私の足を鷲掴みます。
「っ、嫌です! 離しなさい……!」
「それで抵抗のつもりか。もっと逆らってみせろ」
「あっ、やめ……!」
強引に足を開かされました。
緩んだ腰巻が乱れて、太ももが鬼の前にさらされます。
「ああ、美味そうだ。この血肉を鬼神様に献上せねばならぬとは……」
「いやっ、嫌です!」
無我夢中で暴れました。
足を振り上げて鬼の巨体を蹴りつけますがびくともしません。
でもこのまま好きに犯されて食い荒らされるなど絶対嫌です。
私は暴れまわって、ふと手が小太刀に届きました。瞬間。
「苦しんで死になさい!!」
グサッ!!
肉を突き刺す感触。
私は小太刀を鬼の顔面に突き刺したのです。
人間でないのなら躊躇いません。突き刺した小太刀を抉るように捻ってやります。
「許してあげませんっ、死んで詫びなさい……!」
「クッ、グアアアアアッ……!!」
鬼が絶叫してのたうち回ります。
逃げるなら今!
ドカッ! 鬼が怯んだ隙に巨体を蹴り飛ばしました。
鬼の下から飛び出して、御簾をくぐって床の間から逃げ出しました。
素足のまま格子を越えて転がるように庭園に出ます。
鬼が追ってくる気配に全身の血の気が引いていく。
急いで屋敷を出ると、月明かりだけを頼りに夜の都を走りました。
人の気配を感じません。野犬の遠吠えすら聞こえません。はあはあと自分の息が乱れる音だけが響いています。それは未だ鬼の結界内にいるということ。
背後に迫る鬼の気配に恐怖が高まっていきます。
これほど広範囲に結界を張れる鬼が普通の鬼であるはずがありません。やはり伊勢から私を追ってきた鬼。捕まれば犯され、人の身などいともたやすく引き裂かれるでしょう。
それだけは駄目です。絶対駄目です。
もし私が死ねば伊勢の斎王に危険が及んでしまいます。それだけは阻止せねばならぬのです。だから私はできるだけ生き抜いて、できるだけ遠くへ逃げなければ。
私は恐怖で震える体を叱咤して走り続けました。
でも曲がり角を曲がった、その時。
「うわっ!」
ドンッ! なにかにぶつかりました。
衝撃に跳ね飛ばされそうになるも、力強い腕に抱きとめられます。
「大丈夫か?」
頭上から心配そうにのぞき込まれ、私は驚きで目を丸めました。
ぶつかったのは黒の絹生地に朱色糸の刺繍を施した狩衣姿の男だったのです。
鍛えられた体躯の男は精悍ながらも息を飲むほど美しく整った顔立ちをしていました。
思わず凝視してしまう。なぜか胸の奥がざわついて言葉を失う。
そして男も私を見て一瞬だけ驚愕しました。でもそれは見間違いかと思うほど一瞬で、すぐに男は鷹揚とした笑みを浮かべました。