天妃物語 〜鬼討伐の条件に天帝の子を身籠ることを要求されて〜
「……まさかそんな反応をされるとは思わなかったな。ただ俺が贈りたいだけなんだが」
「そ、そういうものなんですか?」
おずおずと見つめると黒緋が優しく目を細めて私を見つめます。
「嫌でなければ受け取ってほしい。嫌ではないんだろ?」
「っ、は、はい! 嫌なわけありません! ありがとうございますっ……!」
私は堪らなくなって翡翠の櫛を両手で受け取りました。
受け取ると黒緋も嬉しそうに笑んで、私の頬が熱くなっていきます。
「すみませんっ。こうして贈り物をしてもらうのは初めてで、どういう反応をすればいいのか迷ってしまってっ……。でも、嬉しいです。贈り物ってこんなに幸せな気持ちになれるんですね」
夢みたいでした。
贈り物ってすごいのですね。こんな幸せな気持ちになれるなんて、ほんとうに夢みたいです。
「ありがとうございます。大切にします」
両手で受け取った櫛をそっと胸に抱きしめました。
この櫛を毎日使いたいです。ああでもそれは勿体ないでしょうか。
こうして喜ぶ私に黒緋が可笑しそうに笑います。
「櫛くらいでおかしな奴だな。そんなに喜んでくれるならまた何か贈ろう」
「も、勿体ないです。お気持ちだけで充分ですからっ」
「そうか? 贈り物一つで喜んでくれるなら安いものだぞ」
「…………」
「お前はおもしろいな」
黒緋はそう言ってまた笑いました。
私はなんだか少し恥ずかしくなって、誤魔化すように頬をかいてしまう。
一人ではしゃいでちょっと恥ずかしいです。
もしかしたら黒緋にとって贈り物をするのは慣れたことなのかもしれませんね。贈ったり、贈られたり、彼にとってはなんともないことなのかもしれません。
「人が増えてきたな」
ふと黒緋が言いました。
気が付けば露店の周りには人が集まってきていました。珍しい異国の品々に足を止める人が多いのです。
「鶯、移動するぞ」
「あ……」
手を、握られました。
私の手を握ったまま黒緋が歩きだして、私は引っ張られるままについていきます。
人混みのなかを離れないようにしっかりと握られて、そのぬくもりと感触に意識が集中してしまう。胸が痛いほど高鳴って呼吸の仕方も忘れそう。
人混みを抜けて黒緋が立ち止まりました。
私も立ち止まります。でも握られた手が気になって落ち着きません。
そんな私に黒緋も気づいて、「いきなり悪かった」と申し訳なさそうに言いました。
でもそうしながらも手は握られたままで……。
「このままでもいいか?」
「え?」
「このまま、もうしばらく」
「あ、……はい」
小さく頷きました。
顔が耳まで熱いです。握られた手は黒緋のぬくもりとまじりあって、まるで自分の手じゃないみたい。
手を繋いで市を歩きだすと、すれ違う人たちが私たちを見てなにかを囁きあっています。手を繋いで歩いていると目立つのでしょう。
でも気になりませんでした。だって今は手を繋いでいる黒緋に夢中で自分たち以外の言葉なんて聞こえません。
「そ、そういうものなんですか?」
おずおずと見つめると黒緋が優しく目を細めて私を見つめます。
「嫌でなければ受け取ってほしい。嫌ではないんだろ?」
「っ、は、はい! 嫌なわけありません! ありがとうございますっ……!」
私は堪らなくなって翡翠の櫛を両手で受け取りました。
受け取ると黒緋も嬉しそうに笑んで、私の頬が熱くなっていきます。
「すみませんっ。こうして贈り物をしてもらうのは初めてで、どういう反応をすればいいのか迷ってしまってっ……。でも、嬉しいです。贈り物ってこんなに幸せな気持ちになれるんですね」
夢みたいでした。
贈り物ってすごいのですね。こんな幸せな気持ちになれるなんて、ほんとうに夢みたいです。
「ありがとうございます。大切にします」
両手で受け取った櫛をそっと胸に抱きしめました。
この櫛を毎日使いたいです。ああでもそれは勿体ないでしょうか。
こうして喜ぶ私に黒緋が可笑しそうに笑います。
「櫛くらいでおかしな奴だな。そんなに喜んでくれるならまた何か贈ろう」
「も、勿体ないです。お気持ちだけで充分ですからっ」
「そうか? 贈り物一つで喜んでくれるなら安いものだぞ」
「…………」
「お前はおもしろいな」
黒緋はそう言ってまた笑いました。
私はなんだか少し恥ずかしくなって、誤魔化すように頬をかいてしまう。
一人ではしゃいでちょっと恥ずかしいです。
もしかしたら黒緋にとって贈り物をするのは慣れたことなのかもしれませんね。贈ったり、贈られたり、彼にとってはなんともないことなのかもしれません。
「人が増えてきたな」
ふと黒緋が言いました。
気が付けば露店の周りには人が集まってきていました。珍しい異国の品々に足を止める人が多いのです。
「鶯、移動するぞ」
「あ……」
手を、握られました。
私の手を握ったまま黒緋が歩きだして、私は引っ張られるままについていきます。
人混みのなかを離れないようにしっかりと握られて、そのぬくもりと感触に意識が集中してしまう。胸が痛いほど高鳴って呼吸の仕方も忘れそう。
人混みを抜けて黒緋が立ち止まりました。
私も立ち止まります。でも握られた手が気になって落ち着きません。
そんな私に黒緋も気づいて、「いきなり悪かった」と申し訳なさそうに言いました。
でもそうしながらも手は握られたままで……。
「このままでもいいか?」
「え?」
「このまま、もうしばらく」
「あ、……はい」
小さく頷きました。
顔が耳まで熱いです。握られた手は黒緋のぬくもりとまじりあって、まるで自分の手じゃないみたい。
手を繋いで市を歩きだすと、すれ違う人たちが私たちを見てなにかを囁きあっています。手を繋いで歩いていると目立つのでしょう。
でも気になりませんでした。だって今は手を繋いでいる黒緋に夢中で自分たち以外の言葉なんて聞こえません。