天妃物語 〜鬼討伐の条件に天帝の子を身籠ることを要求されて〜
「黒緋様、あそこの露店に寄ってください。山芋とごぼうを買っていきたいんです」
「分かった。晩酌用の肴も欲しいな」
「分かっていますよ。なにか作ります」
「お前もどうだ? 付き合ってほしいんだが」
「ふふふ、喜んで」
嬉しいお誘いです。
晩酌なんてしたことはありませんが、紫紺を寝かしつけたらぜひお付き合いしましょう。
こうして二人でなにげない会話を楽しみながら市を歩いていると、ガラガラと牛車の車輪の音が聞こえてきました。
見れば貴族のものと思われる立派な牛車が通りをゆっくり進んでいます。
私と黒緋は邪魔にならぬように道の端に寄りましたが、牛車が目の前を通り過ぎようとした時。
ガタガタガタ! ガタガタガタ! ふと牛車の中が騒がしくなりました。
しかも牛車は私たちの前で停車して、なにごとかと私と黒緋は顔を見合わせます。
「……どうしたんでしょうか」
「さあ?」
停車した牛車を見つめていましたが、バサバサッ! 突然、高貴な衣装の女性が勢いよく転がり落ちてきました。
「きゃあっ! い、いたい〜っ!」
地面に不時着した女性は情けない声をあげました。
でも私はその姿に大きく目を見開く。だって、だって!
「萌黄!!」
そう、双子の妹の萌黄だったのです。
私は慌てて萌黄に駆け寄りました。
「だ、大丈夫ですか萌黄! どうしてあなたがここにいるんです!」
意味が分かりません。斎王の萌黄は伊勢の斎宮にいるはずなのにっ……。
ここで会えた混乱と喜びで頭がいっぱいになってしまいます。
でもやっぱり嬉しくて、萌黄を抱きしめて顔を覗きこみました。ああ、伊勢でお別れした時と変わっていませんね。私のかわいい妹です。
「萌黄、元気そうですねっ……」
「鶯、会いたかったっ。ずっと会いたかったわ……!」
萌黄が感極まって私に抱きついてきました。
私も両腕にしっかり抱きしめて、幼い頃からしていたように何度も何度も背中を撫でてあげます。
萌黄がおずおずと顔を上げました。
萌黄の大きな瞳が涙で潤んでいます。私の視界もぼやけてしまって、お互いによく見えなくて泣き笑いました。
「分かった。晩酌用の肴も欲しいな」
「分かっていますよ。なにか作ります」
「お前もどうだ? 付き合ってほしいんだが」
「ふふふ、喜んで」
嬉しいお誘いです。
晩酌なんてしたことはありませんが、紫紺を寝かしつけたらぜひお付き合いしましょう。
こうして二人でなにげない会話を楽しみながら市を歩いていると、ガラガラと牛車の車輪の音が聞こえてきました。
見れば貴族のものと思われる立派な牛車が通りをゆっくり進んでいます。
私と黒緋は邪魔にならぬように道の端に寄りましたが、牛車が目の前を通り過ぎようとした時。
ガタガタガタ! ガタガタガタ! ふと牛車の中が騒がしくなりました。
しかも牛車は私たちの前で停車して、なにごとかと私と黒緋は顔を見合わせます。
「……どうしたんでしょうか」
「さあ?」
停車した牛車を見つめていましたが、バサバサッ! 突然、高貴な衣装の女性が勢いよく転がり落ちてきました。
「きゃあっ! い、いたい〜っ!」
地面に不時着した女性は情けない声をあげました。
でも私はその姿に大きく目を見開く。だって、だって!
「萌黄!!」
そう、双子の妹の萌黄だったのです。
私は慌てて萌黄に駆け寄りました。
「だ、大丈夫ですか萌黄! どうしてあなたがここにいるんです!」
意味が分かりません。斎王の萌黄は伊勢の斎宮にいるはずなのにっ……。
ここで会えた混乱と喜びで頭がいっぱいになってしまいます。
でもやっぱり嬉しくて、萌黄を抱きしめて顔を覗きこみました。ああ、伊勢でお別れした時と変わっていませんね。私のかわいい妹です。
「萌黄、元気そうですねっ……」
「鶯、会いたかったっ。ずっと会いたかったわ……!」
萌黄が感極まって私に抱きついてきました。
私も両腕にしっかり抱きしめて、幼い頃からしていたように何度も何度も背中を撫でてあげます。
萌黄がおずおずと顔を上げました。
萌黄の大きな瞳が涙で潤んでいます。私の視界もぼやけてしまって、お互いによく見えなくて泣き笑いました。