天妃物語 〜鬼討伐の条件に天帝の子を身籠ることを要求されて〜
「鶯、ずっと会いたかったの……! 伊勢で別れた時から、鶯のことを考えない日はなかったわ。どこも怪我してない? 変な呪いにかかってない?」
萌黄は私の手を握って焦った口調で聞いてきます。
落ち着きがない萌黄に苦笑しました。この子は子どもの頃から変わりませんね。とても優しくて愛らしくて、芯の強い自慢の妹です。でもちょっと鈍臭いのが玉に瑕だけど。
「私は大丈夫です。元気ですよ。それよりどうして斎王のあなたが都に? あなたが斎宮から出てくるなんて、なにかあったんですか?」
「鶯に会うために決まってるじゃない! 鬼神が討伐されたのを感じて、でも鶯になにかあったんじゃないかって心配で、だからっ……!」
萌黄はあふれる涙を衣装の袖で押さえます。
萌黄は伊勢にいながら鬼神が討伐されたことを感知したのです。でも同時に私の身を心配したのでしょう。
グズグズ泣いている萌黄の背中を慰めるように撫でてあげました。泣き虫なのも子どもの頃から変わりませんね。
「よしよし、泣いてはいけませんよ。それにしても、よくその理由で斎王が伊勢からでることを許されましたね?」
「うん、斎王を辞めるって言ってみたの。そしたら許可が下りて」
「ええ!? あ、あなたそんなこと言ったんですか? ほとんど脅迫じゃないですか! あ、あなたらしくないっ……」
「そうでもしないと伊勢を出る許可が下りなかったから……。でもどうしても鶯に会いたかったの。鬼神がいなくなったのに鶯は帰ってこないし、でも鶯が関わっていないはずないと思っていたから。だから、だからどうしても鶯に会いたかったの。御所に上がって帝にご挨拶するっていう理由を作ってもらって、やっと京の都に来ることができたんだよ」
萌黄はそう言うと涙で真っ赤になった目で私を見つめます。
「ごめんなさいっ。鶯ばかり辛い思いをさせて、苦労ばかりさせてっ……。ほんとうに、ほんとうにごめんなさい……!」
「ああ泣かないでください。斎王がこれくらいで泣いてどうするんです。それに白拍子が斎王を守るために命を賭すのは当然のことです」
私はそう言ったけれど萌黄は泣きながら首を横に振るばかり。
困りましたね。なでなでしてあげます。
「では、私はあなたの姉です。あなたを守るために命を賭すのは当然のことです。苦労などありませんでしたよ」
「っ、姉さまっ……!」
萌黄がぎゅっと抱きついてきました。
斎王になってからあなたは凛とした姿を見せてくれるようになったけれど、それでも私の前では甘えたで泣き虫で鈍臭い。そんな変わらぬ姿を見せてくれるのですね。
私はよしよしと撫でながら優しく慰めます。
萌黄は私の手を握って焦った口調で聞いてきます。
落ち着きがない萌黄に苦笑しました。この子は子どもの頃から変わりませんね。とても優しくて愛らしくて、芯の強い自慢の妹です。でもちょっと鈍臭いのが玉に瑕だけど。
「私は大丈夫です。元気ですよ。それよりどうして斎王のあなたが都に? あなたが斎宮から出てくるなんて、なにかあったんですか?」
「鶯に会うために決まってるじゃない! 鬼神が討伐されたのを感じて、でも鶯になにかあったんじゃないかって心配で、だからっ……!」
萌黄はあふれる涙を衣装の袖で押さえます。
萌黄は伊勢にいながら鬼神が討伐されたことを感知したのです。でも同時に私の身を心配したのでしょう。
グズグズ泣いている萌黄の背中を慰めるように撫でてあげました。泣き虫なのも子どもの頃から変わりませんね。
「よしよし、泣いてはいけませんよ。それにしても、よくその理由で斎王が伊勢からでることを許されましたね?」
「うん、斎王を辞めるって言ってみたの。そしたら許可が下りて」
「ええ!? あ、あなたそんなこと言ったんですか? ほとんど脅迫じゃないですか! あ、あなたらしくないっ……」
「そうでもしないと伊勢を出る許可が下りなかったから……。でもどうしても鶯に会いたかったの。鬼神がいなくなったのに鶯は帰ってこないし、でも鶯が関わっていないはずないと思っていたから。だから、だからどうしても鶯に会いたかったの。御所に上がって帝にご挨拶するっていう理由を作ってもらって、やっと京の都に来ることができたんだよ」
萌黄はそう言うと涙で真っ赤になった目で私を見つめます。
「ごめんなさいっ。鶯ばかり辛い思いをさせて、苦労ばかりさせてっ……。ほんとうに、ほんとうにごめんなさい……!」
「ああ泣かないでください。斎王がこれくらいで泣いてどうするんです。それに白拍子が斎王を守るために命を賭すのは当然のことです」
私はそう言ったけれど萌黄は泣きながら首を横に振るばかり。
困りましたね。なでなでしてあげます。
「では、私はあなたの姉です。あなたを守るために命を賭すのは当然のことです。苦労などありませんでしたよ」
「っ、姉さまっ……!」
萌黄がぎゅっと抱きついてきました。
斎王になってからあなたは凛とした姿を見せてくれるようになったけれど、それでも私の前では甘えたで泣き虫で鈍臭い。そんな変わらぬ姿を見せてくれるのですね。
私はよしよしと撫でながら優しく慰めます。