愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 別荘に戻ると、清隆から、レース編みでもしたらどうかと提案され、雅はそれに頷いた。念のため時間を潰せるものも持っていけと言われていたから、一通りの道具は持ってきているのだ。

 ソファーに座って雅が静かにレースを編む中、なぜか清隆は雅をその内に囲うようにして座っていて、雅は落ち着かなかった。こんな体勢では清隆は何もできなのではないかと尋ねてみても、雅を抱きしめるのが今のしたいことだからと言われてしまって、雅は身を預けるしかない。

 先程想いを確かめ合ったとはいえ、急に恋人のような触れ合いが始まってしまって、雅は心がそわそわとして、どうにも恥ずかしかったけれど、決してやめてほしいとは思わなかった。夕飯の時間になるまで、ずっと清隆のぬくもりを背に感じながら過ごした。
< 105 / 177 >

この作品をシェア

pagetop