愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 寝起き早々の甘いやりとりに、雅は幸せのため息をこぼす。それは今日だけのことでもなくて、愛を確かめ合ったあの日からずっとだ。

 清隆は、毎日毎日たくさんの甘い言葉と行動で、雅をこれでもかと甘やかす。なんだか急にお姫様にでもなったかのようで、雅は心がこそばゆくてしかたない。それでも毎日毎日与えられ続ければ、その生活が当たり前になっていった。

 雅はもう清隆中毒にでもなったかのようで、日中も彼のことを想ってはため息をこぼす。こんなふうに自分の感情をコントロールできないのは子供の頃以来で、雅はそれが楽しくもあり、怖くもあった。

 感情に流されれば、あとでつらい目に合う。雅にはその考えが染みついているのだ。自分の気持ちを優先すれば、いつも父の仕置きが待っていた。雅が平和に暮らすためには、周囲の顔色を窺うのが最善だったのだ。

 けれど、父とは違う清隆の優しい態度に、雅は少しずつ、少しずつ感情を表に出すことを覚えていった。清隆が雅の心を解放してくれたのだ。
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