愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 雅が自分の感情に振り回される日々はその後も続いていき、雅の心はどんどん豊かになる。感情を表情に乗せることも自然と増えていった。それはきっと、清隆によるとある特訓の成果でもあるだろう。

 清隆は、雅が雅の想いを口にできるよう、雅に様々な問いかけをしてくるのだ。雅が上手く言葉にできなくても、清隆は辛抱強く待ってくれる。だから、雅は次第に自分の想いを言葉にできるようになっていった。

 もちろんまだすべてを口にできるようになったわけではない。特に否定的な言葉を口にするのはどうにも苦手で、尻込みしてしまう。

 それでも以前の雅に比べれば、ずっとずっと自由に話すことができるようになった。頭で考えつくした言葉ではなく、心のままに思った言葉を口にできるようになっていったのだ。


 そして、休日に二人並んでソファーに座っている今も、清隆は雅にその試練を与えてくる。
< 110 / 177 >

この作品をシェア

pagetop