愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 急に清隆の温度が遠くなっていって淋しくなる。もっと邪魔をしてほしかった。もっともっと触れていてほしかった。自分にもっと構ってほしい。

 そんな気持ちのままに清隆を見つめれば、清隆はとてもいじわるなことを言ってくる。

「どうした? 言いたいことがあるなら、はっきり言いなさい」

 きっと清隆は雅の今の気持ちなんてお見通しだろう。けれど、雅から望まないと彼は与えてくれない。雅はそれをもうわかっている。もちろん彼が、雅の言葉をいつまででも待ってくれるということも。だから、雅は口にする。今の自分の気持ちを。

「……まだ触れていてほしいです」

 雅がそれを口にすれば、清隆は満足そうに微笑みだす。

「わかった。その望みに応えよう。こちらへおいで」

 清隆は自身の膝を叩いて雅を促してくる。本格的に雅と触れ合ってくれるつもりらしい。

 雅が大人しく彼の膝に跨れば、すぐさま唇へのキスがやってきた。

「雅、愛しているよ」
「私も、愛しています」

 清隆の腕が雅の背に回って、清隆のほうへとグッと引き寄せられる。雅が清隆の首元に顔を寄せるようにしてしな垂れかかれば、清隆は優しく雅の髪を撫ではじめる。

「雅、いい子だな。ちゃんと自分の気持ちを口にできてえらいな。どうかそのまま素直な君でいてくれ。な?」
「はい」

 清隆はいつだってこうして雅のことを受け入れてくれる。ありのままの雅でいいのだと教えてくれる。いつもいつも雅の気持ちを大事にしてくれるから、雅の心は益々清隆を求めていくのだ。
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